話題作が多い春ドラマのなかで、もっとも注目を集める木村拓哉主演のテレビ朝日木曜ドラマ『Believe―君にかける橋―』が4月25日にスタートした。
近年も、ほぼ毎年のように連続ドラマで主演を務める木村拓哉だが、本作ではここ数年演じてきたヒーロー的な役柄とは異なる人物像を演じている。
※以下、1話のネタバレがあります。ご注意ください。
真実にフタをした主人公の人生再生の物語
本作で木村拓哉が演じるのは、大手ゼネコン・帝和建設の橋づくりに情熱を燃やす土木設計部長・狩山陸。東京都が心血を注ぐ一大プロジェクトに設計責任者として携わり、数年にわたる奮闘の日々を送ってきたが、死者が出る大事故が発生してしまう。
警察は事故発生の原因には、設計変更があったとし、狩山はその責任者として業務上過失致死傷罪に問われた。そして実刑の有罪判決を受け、刑務所に収監される。
しかし、その事故発生の本当の原因は、下請け会社が強度の低い、安物の資材を使用していたことにあった。「帝和建設を守るため」として、社長・磯田典孝(小日向文世)に隠蔽を頼まれ、出所後を約束された狩山は、真実にフタをして刑を受け入れたのだ。
そんな最中に、狩山が収監された刑務所に、妻・玲子(天海祐希)が面会に訪れる。玲子は、自身ががんに侵され、余命が短いことを告げた。
それを知った狩山は、真実を明かして裁判のやり直しを求めることを決意する。Believeは、真実を隠し通そうとする会社と闘う、狩山の人生再生の社会派ヒューマンドラマになる。
ここ数年連続ドラマで木村拓哉が演じてきたのは、『グランメゾン東京』(TBS系・2019年)のフランス料理シェフ、『BG〜身辺警護人〜第2章』(テレビ朝日系・2020年)のボディガード、『未来への10カウント』(テレビ朝日系・2022年)での人生のリングに返り咲く高校ボクシング部のコーチ、『風間公親-教場0-』(フジテレビ系・2023年)の新人刑事の刑事指導官、などだ。
大雑把にくくれば、いずれも孤高の天才が周囲を巻き込み、または周囲に影響を与えながら未来を切り開いていく成功物語と言えるだろう。職業は異なるが、演じてきた人物像には共通するヒーロー性がある。
木村拓哉の強烈な個性が宿るそれらの役は、アンチからは“何を演じてもキムタク”と言われながらも、彼が演じるからこそ生まれる圧倒的なオーラをまとうキャラクターを体現し、スターの存在感を存分に放ってきた。
しかし、本作は異なる。犯罪者となり、刑務所の中から無実を訴えて人生を取り戻そうとする元会社員の再生物語では、これまでの強い人間ではなく、木村拓哉オーラをうちに押し込めて、弱い人間を繊細に演じている。
作品ごとに幅広い役柄を自分のものにしてきた木村拓哉だが、また1つの新しいタイプのキャラクターに挑む本作を、どのように自身のカラーに染めていくのか。
木村拓哉自身のキャラクターと重なる点でいえば、第1話では、刑務所で巨漢の囚人を軽く組み伏せる、腕っぷしの強さを示すシーンがあった。本作の主人公の人物像としてはそぐわない気もするが、そこには本人のマッチョイズムが反映されているのかもしれない。物語が進行しながら、狩山陸と木村拓哉がどうシンクロしていくかは、1つの注目ポイントになりそうだ。
物語のカギになる3つのポイント
この先、狩山は真実を明らかにするために、会社と闘っていくことになるが、刑務所区長・林一夫(上川隆也)が関わる、得たいの知れない何かが背後にあることも匂わせている。
刑務所で最大の権力を持ち、狩山の行動を監視する怪しい存在として描かれた林がキーマンの1人になることは間違いないが、ほかにも3つポイントがありそうだ。
1つは、妻・玲子の言葉だ。狩山との会話で「自分の歯磨き粉を1回使ったくらいでわかる、緻密で小さい男」など、繰り返し狩山を緻密な人間だと話していた。玲子は「緻密なあなたが設計ミスをするわけがない」と言っていたが、その緻密さがこの先に意味を持ってくるのだろう。
木村拓哉主演「Believe」。妻の玲子(天海祐希)の言葉が物語のカギに?(写真は公式サイトより引用)もう1つも玲子とのやりとりだ。刑務所の面会室で「嘘」という言葉が繰り返された。唯一の味方である弁護士・秋澤良人(斎藤工)との会話でも狩山は「嘘をついていた。誰も救っていない。真実にフタをしていただけ」とも語っている。のちに「嘘」が物語の展開のカギとなるのかもしれない。
そして、3つ目が第1話の冒頭とラストで登場した、一人二役を演じる竹内涼真だ。冒頭では事故が起きた工事を請け負っていた作業員、ラストでは事故を捜査する警視庁刑事部捜査第一課の刑事・黒木正興として現れた。なぜ一人二役なのか。どちらも事故に深く関わる人物だが、そこにも意味があるのではないだろうか。
木村拓哉と狩山陸の人生の再生がリンクする?
第1話で、骨太な社会派ヒューマンドラマとなりそうな予感がひしひしと伝わってきた本作。
オリジナル脚本を手がける井上由美子氏は、木村拓哉とは『GOOD LUCK!!』(TBS系・2003年)と『エンジン』(フジテレビ系・2005年)でタッグを組み、人間描写の名手として名高いストーリーテラーだ。
木村拓哉をよく知る井上氏が描く人生の再生物語となる本作は、2023年に所属事務所問題などもあった木村拓哉の新たなスタートとしての再生ともリンクするのかもしれない。
いまは周囲に敵ばかりの狩山だが、ここから先の生きる道をしっかりと見据えている。木村拓哉演じる狩山の生き様を見届けたい。
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