国内で唯一、病院以外に身元を明かさず子どもを産む「内密出産」に取り組んでいる熊本市の慈恵病院は28日、2021年12月の初事例から3年間で計38例の出産があったと発表した。蓮田健(たけし)院長は記者会見で、乳児の命を守る有効性を強調し「ぜひ都道府県に1カ所ずつ(内密出産ができる施設を)設けてほしい」と訴えた。
慈恵病院によると、母親38人の年齢は、19歳以下が9人、20代が26人、30代以上が3人。居住地は熊本県3人、熊本以外の九州10人、関東13人、近畿5人など全国に及ぶ。
内密出産を選んだ理由は「親(両親もしくは父、母)に知られたくない」が29人に上った。出産後に乳児を引き取るなどして、匿名での出産を撤回したケースも14人いた。乳児の健康状態は良好36人、要治療1人、死亡1人(生後に肺炎発症)だった。
蓮田氏は内密出産について「女性が一人隠れて出産することでストレスの極限状態に陥り(乳児の)遺棄や殺人に至る。その前に保護できるセーフティーネットだと確信を強めている」と説明。一方、「遠方から来てぎりぎり出産が間に合う人もいる」として、各地でアクセスしやすいようにさまざまな場所に施設が設置されるよう求めた。
また、不同意性交で妊娠し、精神的に傷ついた女性から内密出産の相談があったものの、対応の難しい身体障害が女性本人にあり、地元で支援する人がいたことから、受け入れを見送ったケースがあったと報告。子どもはその後、胎内で亡くなり、女性も自死したといい、蓮田氏は「反省している。言い訳をせず、全力で受け入れる」と語った。
内密出産を巡っては、東京の社会福祉法人「賛育会」が24年度内の導入を目指している。【中村敦茂】
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