鹿児島県が県産和牛の消費拡大に力を入れている。肉質や飼育頭数、産出額などで日本一であることをアピールするロゴマークを新たに決定。提供する県内外の飲食店などにポスターやのぼりを配布するなど、消費者の認知度を上げようと躍起になっている。背景には、飼料高や低価格志向による需要低迷で、畜産農家の経営が苦しい状況がある。
「本県は(和牛の五輪とも呼ばれる)全国和牛能力共進会で2回連続日本一をとり、和牛の飼育頭数も多く、産出額も日本一。和牛といえば鹿児島県産というイメージの定着を図りたい」。塩田康一知事は11月下旬の記者会見でこう述べ、「和牛日本一鹿児島」統一ロゴマークを発表した。
知事はロゴについて、日の丸をイメージした赤い円にキャッチコピーを入れ、鹿児島を連想させる桜島と和牛のイラストをあしらったことを説明。「鹿児島黒牛など生産団体ごとに個別の銘柄はあったが、県全体で統一的なイメージを打ち出すことで販売や輸出の拡大につなげたい」と意気込みを語った。
県は7月末から、県産和牛を常時提供する飲食店などに「和牛日本一鹿児島応援店」として登録してもらう取り組みを始めている。登録店には登録証を交付するほか、ロゴマークやポスター、のぼりを配布して店で掲示してもらう。
県内の飲食店やホテル、精肉店などを中心に、幅広く全国の業者に登録を呼びかけるとしている。11月下旬時点で52店舗が登録しているが「県外のお店にも登録してもらってロゴやのぼりを使うのも可能。さらに県内外向けに登録をしてもらえるよう呼びかけていく」(畜産振興課)考えだ。
鹿児島県は2年前に共進会で連覇した直後から、県庁入り口に大型看板を設置したり、首都圏の飲食店でフェアを開いたりして鹿児島の和牛をアピールしてきた。そのうえでさらに「和牛県」のアピールに力を入れるのは、畜産農家の経営が厳しさを増していることが背景にある。
ロシアのウクライナ侵略を機に飼料価格が国際的に高止まりする一方、国内では物価上昇による生活防衛意識の高まりもあって高級食材である和牛肉の需要が低迷している。例えば東京市場でのA5ランクの牛枝肉の卸値(月間平均)は8月に1キログラムあたり2322円となり、過去3年で最も安い水準だった。
年末年始はローストビーフなど牛肉需要が増える傾向があるため、11月は前年並みの2650円前後まで持ち直している。需要増加期に首都圏の消費者の認知度を上げようと、県は12月下旬から抽選で県産和牛が500人に抽選であたるキャンペーンをサイト上で始める。
さらに首都圏の35駅と羽田空港では、鹿児島県産牛を紹介しつつキャンペーンへの参加を訴える広告を出す予定だ。「大消費地の首都圏で認知度向上を図り、県産和牛の消費拡大につなげたい」(塩田知事)という。
もう一つ、期待をかけるのは海外への和牛輸出だ。鹿児島県の牛肉輸出額は2023年度に前年度比13%増の140億円強だった。米国や香港向けが多いといい、ここをさらに伸ばしたい考え。農水省が発表した全国の23年の牛肉輸出額(くず肉含む)は前年比11%増の569億円だった。
和牛人気は海外でも高いが、神戸牛や松阪牛など名だたるブランドに比べて鹿児島の和牛は知名度がさほど高くない。まずは国内外で鹿児島の和牛の魅力を伝え、知名度を上げる努力が急務となっている。
(笠原昌人)
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