スーパー店内にツキノワグマが2日間余り居座り、従業員1人が襲われた秋田市では11月末から出没情報が相次ぎ、市民らが警戒を強めている。多くの人が行き交う市中心部での目撃情報もあり、秋田県は改めて市民に出没情報のマップシステム「クマダス」などのこまめな確認を呼びかけている。
県警によると、12月1日午前1時40分ごろ、JR秋田駅から南に約500メートル離れた秋田市南通宮田の市道で体長約50センチのクマ1頭が目撃された。また3日午後5時20分ごろには住宅が密集する同市八橋大畑2の市道でも体長約1メートルの1頭が目撃されたという。いずれも秋田市役所から2キロ近い場所に位置する。
クマが居座った「いとく土崎みなと店」の周辺でも11月29日から3件余り目撃され、同日午後9時ごろには国道7号で車がクマと衝突する事故も起きた。スーパーの近くにある「土崎みなと歴史伝承館」が設置したカメラにはこの時刻ごろに敷地内を動き回るクマの映像が映っていた。その後スーパーのクマは捕獲・駆除されたが、県警は引き続き注意を呼びかけている。
スーパーでは4日午前、入り口付近で関係者が店のドア付近の消毒作業に追われていた。クマが侵入して以降は臨時休業が続いており、店は7日午前9時に営業を再開する見通しだ。
また店内のクマの様子が徐々に分かってきた。11月30日に店内でドローンを飛ばした秋田市の関係者によると、3~4時間ほど操縦し、タブレットの画像を見ていたところ、店内の花や肉、お菓子の売り場の一部で荒らされた形跡があった。クマは店舗内では比較的狭い商品棚の間ではなく、大きく周回して動き回っていたとみられるが「毛や足跡は特段、見当たらなかった」という。
またこの関係者は以前、ドローンの研修を受け、操作方法を習得していたことがこうした場面で役立ったとし、「人が入れば危険な空間の中で、ドローンを使うことで中の様子がある程度確認できた」と成果を振り返る。ドローンを使える関係職員が増えていくことで人的被害の軽減につながりそうだ。
クマ駆除に賛否相次ぐ
一方、2日にスーパー店内のクマが捕獲・駆除されたことで、県や秋田市には県内外から苦情や提案の電話、メールが相次いでいる。秋田県には4日現在で電話約30件、メール10件弱、秋田市には電話190件余り、40件以上のメールが寄せられた。県は賛否がほぼ半々、秋田市は約6割が反対意見だった。
具体的には「クマを殺すのは良くない。やめてほしい」「逃がしてほしい」「クマは悪くない」といった声がある一方、「県民の命を救うためにはやむを得なかった」「そもそも共存はできず、駆除すべき」などとする内容もあったという。
クマの姿が繰り返し全国的に報道されることで、各所からの苦情の声が強まり、その対応に追われる職員の心身に過大な負担がかかっている。行政側の関係者は「クマの映像が大々的に伝わるほど、現場の職員が追い詰められることになってしまう。長時間の対応で日常業務にも影響が出ている」と報道側に一定の配慮を求める。一方で報道によって幅広い注意喚起につながっている面もあり、秋田県の各地でクマのニュースが大きく伝えられるたびに同様の事態が繰り返されている。【工藤哲】
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