特集は街のパン屋さんです。長野県佐久穂町で富山県から移住した夫婦が安心・安全にこだわったパンを作っています。時折、娘3人も店を手伝い、開業して3年ほどですが多くの客に親しまれています。


■店頭には約30種類

焼きたてのパンの香りが厨房に広がります。

佐久穂町のJR八千穂駅前にある「タミーベーカリー」。店頭には食パンや総菜パンなど約30種類が並んでいます。

営んでいるのは木田拓也さん(52)と友美さん(40)の夫婦。

タミーベーカリー・木田拓也さん:
「高級なものを作ってるわけではないんですけど、毎日食べても飽きないものをやっぱり安心安全な食材で作っていくというところを目指している」


町に移住して店を開業。まだ3年ほどですが、多くの常連客ができました。

小学4年生:
「(店内が)いい匂いだから好き」

4年生の母親:
「3年経ってさらに(地域に)なじんでいるなという気もしますし」

人気の理由を探ってみました。

■コロナ禍に転職を考える

拓也さんは富山県出身。大学卒業後はニューヨークへ。兄が営む商社で財務を担当していました。

ダンス留学中だった愛知県出身の友美さんと出会い、2011年に結婚しました。長女が生まれた2014年に地元・富山に戻り経営コンサルタントとして働いてきました。

その後、2人の娘に恵まれ、長女が小学校に入学するタイミングの2020年、より良い教育環境を求め、佐久穂町へ。

移住に合わせて拓也さんは転職を考えます。当時はコロナ禍真っ只中でした。

タミーベーカリー・木田拓也さん:
「当時ロックダウンというか、いろいろなお店がやってなかった時に、パン屋さんだけはどこも営業してたんですよ。僕たちパンを買って、やっぱりパンを食べて笑顔になれる、パン屋さんってすごい幸せをくれる仕事だなと」

経営コンサルタントからパン職人へ。思い切った転職に友美さんはー。

友美さん:
「私も(パンが)好きなんですよね。その場でどう?って聞かれて、数秒もかからずにいいねって答えてましたね」


■母の言葉を思い出し

岡山にあるパン店の開業支援を行う会社で基本を学び、移住の翌年、空き店舗を改装して店をオープン。店名の「タミー」は、二人の母親の名前が同じ「たみこ」なのに由来しています。開業にあたり拓也さんは、母・タミ子さんの言葉をよく思い出したと言います。

タミーベーカリー・木田拓也さん:
「(移住当時)この町にパン屋さんがなかったんですよ。私の母がもともと実家で美容室を経営していたんですけど、母がなんで田舎に美容室を建てたのって聞いた時に『美容室がなかったから建てたんだよ』と。美容室があれば皆さんに喜んでもらえると思ったと、その言葉をすごく思い出して、自分も地元の方たちに喜んでもらえるような、地元になかったパン屋をここにつくりたいと思った」

■地元食材の魅力を発信

生地の基本材料は100%国産の小麦粉に、イースト、水、砂糖、塩とシンプル。バターや卵を含め安心・安全にこだわっています。

タミーベーカリー・木田拓也さん:
「自分たちに子どもがいるので、子どもたちが食べて笑顔になってくれるというか、親も安心して食べてもらえるようにという思いでスタート。(店名を)母親の名前からもらっているので、母の手料理のような、毎日食べても飽きない優しいおいしさのパンを焼きたいなと」

地域に溶け込む取り組みも。地元食材の魅力を発信しようと、近くの酒蔵から仕入れた甘酒を練り込んだ優しい甘さのパンや、信州サーモンのパニーニも販売しています。


■一番人気は「牛乳パン」

店の一番人気は「牛乳パン」。生地には南佐久の牛乳を使っています。

タミーベーカリー・木田拓也さん:
「ご縁をいただければ使わせていただきたいし、信州にはたくさんおいしいものがあるし」

ツーリングの途中に立ち寄った男性2人。牛乳パンを購入しました。

静岡から:
「(食べて)うん、おいしい。懐かしい、昔のミルククリームの感じ。人気ナンバーワンの味、分かりますね。シンプルだけどおいしい」


■常連客「家族のように親切」

移住してきた当時は町にパン店がなかったこともあり、すぐに常連ができました。

町内から:
「焼きたてのパンが食べられるというのと、オーナーさんはじめお店の方の温かい笑顔につられて、きょうも行こうかなと」

こちらの男性は91歳。オープン当初から週2日はパンを買いに訪れています。

常連客(91):
「いいですよ、家族のように親切で。必ず来るだ。評判いいし、おいしいからさ」

■長女の夢はパン屋さんのスタッフ

店の持つ温かい雰囲気。それを醸し出してるのがー

タミーベーカリー・木田拓也さん:
「いつもの袋詰めやってよ」

休日、店を手伝う3姉妹の存在です。

長女・莉央奈さん:
「6点で1339円になります」

小学5年生の長女・莉央奈さん(11)はレジ打ち。

3年生の次女・陽奈さん(8)は袋詰めや砂糖や塩の計量。

「年長さん」の三女・瑛麻さん(5)は地域の施設に卸す商品のシール貼りやトレイの準備も。

長女・莉央奈さん:
「楽しいかな。(将来の夢は)タミーベーカリーの、パン屋さんのスタッフです」

■売れ残りはネット販売

午後4時、この日の営業は終了。

すると、友美さんが売り場に残ったパンを集め始めました。店は、パンを廃棄せず冷凍して、インターネットで販売しています。

食品ロスの削減です。

妻・友美さん:
「私たちも助かるし、お客さんも気持ちよく買ってくれて、お互いにいいのかな」


■街の魅力のひとつになれたら

味だけでなく雰囲気も人気の理由。店は、かつてパン店のなかった町で欠かせない存在になっています。

妻・友美さん:
「目的地にはならないと思うんですけど、ちょっと寄ってくれたりとか、佐久穂の街の魅力のひとつになれたらいいかな」

タミーベーカリー・木田拓也さん:
「私たちもずっとよそから来た人間ではなくて、佐久穂の人っていうふうに皆さんから思ってもらえたらうれしいなと思ってます。地域の方たちに、『あってよかったパン屋さんが』って言ってもらえる存在に、もっとなっていきたい」

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