JR東日本は6日、2026年3月から平均7・1%の値上げとなる運賃改定を国土交通相に申請したと発表した。鉄道利用者が減少して人件費などのコストが増す中、サービスの維持や向上を図る。運賃の全面改定は消費増税に伴う値上げを除き、1987年の国鉄民営化による会社設立以来初めて。
普通運賃の値上げ率は平均7・8%。山手線などの切符の初乗り運賃は現行の150円から160円と10円引き上げる。例えば、東京-新宿間の普通運賃は大人片道で210円から260円と50円の値上げとなる。
定期運賃は通勤定期で平均12%、通学定期で平均4・9%上がる。通勤定期は普通運賃の見直し分を反映。通学定期は家計負担を考慮し、山手線内や横須賀線などの「電車特定区間」以外の路線は据え置く。例えば、東京―大宮間の1カ月の通勤定期は現在より1360円増の1万7970円となり、通学定期は560円増の8810円となる。
新幹線などの特急料金は改定しない。東京―仙台間で東北新幹線「はやぶさ」を利用した場合、普通運賃の改定分は上乗せされ、片道で現在より220円増の1万1630円(普通車指定席)となる。
全面改定の理由について、JR東は「経営環境の変化への対応」と説明した。民営化以来、運賃水準を維持してきたが、新型コロナウイルス禍を受けて在宅勤務が広がるなどして鉄道利用が減少。物価高による経費負担増や今後の沿線人口の減少、人材確保に向けた待遇改善など、鉄道を取り巻く経営環境は厳しさを増しているという。
鉄道運賃は、人件費や設備費などの経費に適正な利益を上乗せした「総括原価」に基づいて算定される。国交省は4月、総括原価の算定要領を27年ぶりに見直し、設備投資の促進や人材の確保、災害からの復旧などに必要な費用を運賃に反映しやすくなった。
JR東の推定では、鉄道部門の収支は26~28年度の3年間の平均で、収入から原価を差し引いた額が911億円のマイナスになる。今回申請した料金改定が実現すれば881億円の増収効果が見込まれ、マイナス幅は30億円まで改善する。
記者会見した渡利千春副社長は「負担増になることは非常に心苦しく感じている。安全の確保やサービス水準の向上に努めながら、お客さまにご納得いただけるようなサービスを提供したい」と理解を求めた。
JR各社では北海道、九州が運賃改定の認可を得ており、25年4月から北海道は平均7・6%、九州は平均15%の値上げとなる。【佐久間一輝】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。