来週、ノルウェーで開かれるノーベル平和賞の授賞式に初めて「高校生平和大使」が出席します。
当時を知らない世代が被爆者の声をどうつないでいくのか。
高校生の思いを取材しました。

甲斐なつきさん。
広島市立基町高校に通う2年生です。
ダンス同好会に所属し放課後は練習に励んでます。
そんな甲斐さんには、もう1つの顔があります。

【甲斐なつきさん】
「この署名は、国連で唯一保存が認められている署名です。みなさんの平和への思いをここ広島から世界へとどけませんか」

「高校生平和大使」。
核兵器廃絶を求めて活動する市民団体に所属しています。

【甲斐なつきさん】
「ロシアのウクライナ侵攻が起こって戦争が見れてしまうことに恐怖を感じて学んできた平和教育、核兵器に関することが少しでも役に立つのではないかと思い、高校生平和大使を目指しました」

ロシアのウクライナ侵攻を機に署名を国連に届けるなど国の内外で活動してきました。
ただ、「高校生平和大使」になった理由はそれだけではありません。
実は、「被爆4世」です。
父方の曽祖父・渡辺新一郎さんは32歳の時、原爆投下翌日に爆心地周辺に入り、被爆。
曽祖母・内藤和子さんは、14歳の時、長崎市内にある軍需工場で学徒動員の作業中に被爆し、生死をさまようほどの大けがをしました。

【甲斐なつきさん】
「祖父母から、曽祖父母の話をされることが多かったと思います。原爆をより自分事として考えるきっかけになっています」今年10月。

《ノーベル平和賞受賞の発表》

被爆者団体の全国組織・「日本被団協」のノーベル平和賞受賞が決まった瞬間を日本被団協・代表委員の箕牧智之さんと迎えました。

【甲斐なつきさん】
「被団協の受賞が世間に大きな影響を与えると思うので、その一環になれるよう私たちも努力していきたい」

歴史的な瞬間に立ち会った甲斐さん。
しかし、更なる大役が待っていました。
高校生平和大使も初めて授賞式に出席することになったのです。

【甲斐なつきさん】
「曽祖父が残した言葉である『こんな思いを誰にもさせてはいけない。二度とこの経験を味わせてはいけない』という怒り、思いをそのままオスロに持っていって伝えることができたらと思っています」

学校生活と両立しながら、授賞式に向けた準備をすることになった甲斐さん。

【同級生】
「本当にすごいと思う。スピーチの原稿とかめっちゃやっている」

高校生平和大使は、現地の高校生などと交流し、核兵器をとりまく現状について議論を交わすことになっています。
この日も自宅に帰り夜遅くまで原稿を考えていました。
現地での活動を前に甲斐さんが改めて手に取ったものがあります。
曽祖父母それぞれが当時の惨状、そして思いをつづった本や手記です。
中でも、曽祖母・和子さんの手記を読んだのは初めてでした。
”頭、顔、左腕、足の踵、傷だらけ、血だらけ。
まるで幽鬼のような姿であっただろう。
バケツで血をかぶったような格好で、立ちつくしている”
そこには原爆の生々しい惨状が書きとめられていました。

【甲斐なつきさん】
「会ったことはない。つらい経験、記憶を呼び起こして書いてくれているものを無駄にしてはいけない。私の代で止まらせてはいけない」

曽祖父母の思いをつなぐという”使命”を強く感じている甲斐さん。

【甲斐なつきさん】
「自然災害による被害ならあきらめもつくが、人間がつくった原子爆弾を許すことはできない」

甲斐さんたちがスピーチでこだわっているのが、被爆の現状を知らない人にいかに「当事者意識」を持ってもらうか、です。
そのために何を語ればいいのか、内容を練り続けています。

【甲斐なつきさん】
「10万人くらいいるといわれている被爆者の思いを背負ってノルウェーのオスロで思いを伝える点で託された使命、責任は大きい。しっかりひとつひとつの仕事に全力で取り組んで、私たちの思い、被爆者の思いがより伝わるようにしていきたい」

授賞式まであと4日。
「曽祖父母をはじめ被爆者の声を届けたい」
甲斐さんは強い決意でオスロに向かいます。

《スタジオ》
【コメンテーター:元カープ・山内泰幸さん】
「甲斐さんたちの世代が語り継いでいかなければいけない。大役だと思うが、現地の高校生と平和に関する議論をすることは非常に貴重な体験になる」

【コメンテーター:叡啓大学・早田吉伸教授】
「世界情勢がこれだけ混沌としてきて、まさにウクライナとかイスラエルの問題がある中で若い人たちにとっての平和の認識、いろんな立場の平和の認識が出てきてると思います。こうした中で日本の高校生が同世代の世界中の人たちとどのように意見交換をして日本の立場をちゃんと理解してもらえるのかというのは本当に大きなチャレンジになるでしょうね」

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