兵庫県の斎藤元彦知事=山田尚弘撮影

 知事選で再選された斎藤元彦知事が所得制限のない県立大学の授業料無償化の完全実施に意欲を見せている。自身の公約だが、県議会では奨学金の拡充も求める意見が出ている。他大学に通う学生と不公平が生じるという主張だ。知事選の争点にもなった若者の高等教育支援をどのように形作っていくか、2025年度予算編成の焦点となりそうだ。【長沼辰哉、山田麻未】

議会は奨学金拡充論

 斎藤氏は3日、県議会の所信表明演説で「多くの県民の皆様から期待が寄せられたのは教育費の負担軽減だ」と強調。県立大学の無償化について代表質問でも「まずは着実に進めたい」と答弁し、奨学金返済支援制度の推進にも言及した。

 無償化は県立大(神戸市西区など)と県立芸術文化観光専門職大(豊岡市)の入学金と授業料について、24年度に県内在住の4年生で所得制限を設けずに実施されている。25年度は2~4年生に広げ、26年度に全学年で実現すると約23億円かかる見通しだ。

 一方、県立2大学以外に通う学生への公的支援は国の修学支援新制度だけ。その他、社員の奨学金返済を支援する制度を設けた県内企業に補助金を出す制度として24年度予算で1億7000万円計上した。

 県によると、23年度の県内の高校卒業生は4万1408人。県立2大学に入学し無償化の対象となったのは757人で、卒業生全体の約2%になる。

 県議会各会派の25年度予算要望では、公明党が、県立大以外の学生との不平等を解消するため、国の修学支援新制度への独自の上乗せの検討や、県立大以外の県内在住の学生への経済的支援を図ることを盛り込んだ。ひょうご県民連合と共産党も返済不要の給付型奨学金制度の創設や拡充を要望した。

 一方、最大会派の自民党は「授業料無償化にこだわらずに社会から評価される魅力ある県立大づくりを推進すること」とした。会派内には県立大と他大学の学生への支援の格差や、支援した学生が卒業後に県内に残るかどうかという政策効果について懸念する声があり、別の方策を検討できるように含みを持たせた形だ。維新の会は、兵庫県民と大阪府民が県立大と大阪公立大に相互に無償で進学できるようにすることを提案した。

 今回の知事選で斎藤氏は県立大無償化を掲げて再選。本会議で「県立大の無償化について、国の高等教育無償化の議論の先べんとなるよう、県議会と丁寧に議論を行っていく」と述べ、施策を進めていく方針を示した。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。