現代人の約8割が発症しているとも言われる「ストレートネック」。姿勢が原因で首の骨が文字通り、真っすぐになり、肩こりや頭痛などを引き起こす病気だ。「スマホ首」とも言われ特に子どもは要注意。予防法などを医師に聞いた。

激痛…首から肩、肘あたりまで

街角インタビューに応じてくれた諏訪市の小松智美さん(40代)。

体の不調に悩まされている。

「つらいです。買い物で重たい荷物を持った時に、首から肩、肘のあたりまで激痛が走る」と、その症状を話してくれた。

普段はスーパーマーケットで働く小松さん。4年ほど前、「ストレートネック」と診断された。

「追い打ちをかけてスマホを見てるので慢性的なストレートネック」と小松さんは話す。

インタビューに応じてくれた小松さん
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ストレートネックとは?

「ストレートネック」とは、いったい、どのような病気なのだろうか。

長野赤十字病院(長野市)の出口正男整形外科部長は「首の骨、頸椎には自然なカーブが存在します。それがなくなって真っすぐな状態になった状態をストレートネックと呼んでいます。日常生活の習慣の中で、姿勢がだんだん異常を来してきて、気付かないうちに首の骨が真っすぐになっている」と説明する。

長野赤十字病院・出口正男 整形外科部長

ポイントは首の骨のカーブ

通常、頸椎は横から見るとS字に湾曲している。

一方、ストレートネックは文字通り、真っすぐだ。

レントゲン写真を並べると一目瞭然。

比較(右がストレートネック)提供:長野赤十字病院

人間の頭の重みは4キロから6キロ。

通常は頸椎の湾曲がバネのような働きをして重みを分散させている。

通常は頸椎の湾曲がバネのような働きをする

首の痛みに頭痛、肩こりも

しかし、ストレートネックになると、頭の重みを首や肩の筋肉で支えようとして通常よりも負担がかかり、さらに脊椎の神経も圧迫される。

出口整形外科部長は「頭の重みが一気にドンと乗っかって、直接、首の骨、体全体に重みがかかるもので、首の痛みとか、頭痛、目の疲れ、慢性的な肩こりといったことが生じる」と話す。

ストレートネックの場合は…

神経が圧迫されて

重症患者のレントゲン写真を見ると、かなり首が前方に倒れてしまっているのがわかる。

こうなると、「脊髄の神経が圧迫され、手足がしびれたり、動かしにくくなったりということが起こりうる」と出口整形外科部長は説明する。

重症患者のレントゲン写真 提供:長野赤十字病院

主な原因に長時間のスマホ

最悪の場合、「下半身麻痺」になる恐れもあるという「ストレートネック」。

主な原因はうつむくことが多いデスクワークやスマートフォンの操作。首を前に傾けた姿勢が長時間続くことで首の骨「頸椎」の自然なカーブが失われてしまうのだ。

出口正男整形外科部長「スマホを見る時に首が前に倒れることが大きな原因の一つと考えている。使い方次第では、うまく調整していかないと首に影響が出てしまう」と急速に普及したスマホは要注意だと警鐘を鳴らす。

ストレートネックと診断された小松智美さんは整骨院にも行っているが、忙しくて行けない時は常に湿布を貼っている状態だという。

小松さんはSNSのチェックなどで長時間、スマホを使っていることが原因と指摘され、「一日3時間から4時間くらい。つい見てしまうけど、時間を決めて見たい」と話す。

イメージ(スマホをのぞく)

長時間のデスクワーク

デスクワークが長時間に及ぶNBSのスタッフもストレートネックに悩まされている。

約5年前に診断された嶌田哲也報道部長は「10年位前から右の首と肩が痛くて5~6年前、病院でレントゲンを撮ったら、ストレートネックだと。先に妻が診断されていて、『姿勢が悪いからだ』とか言ってたら、自分もかと…」と苦笑い。

約5年前に診断・嶌田哲也報道部長

小まめなストレッチを心がけ

3月に診断された漆澤謙治デスクは肩こり、首の痛みに加え耳の奥の方まで痛みが出て検査の結果、ストレートネックと診断された。

「前のめりになって、同じ姿勢でパソコンを凝視するような形で作業することが多いが、できるだけ同じ姿勢を長時間しないよう心掛け、ストレッチを小まめにやっている」と話す。

3月診断・漆澤謙治デスク

でも「スマホは欠かせない」

現代人の約8割が発症しているとも言われるストレートネック。街で聞くと知っている人も多く「予備軍」のような人もいた。

販売業(20代)は「(スマホは)結構触っちゃいますね。気が付くと体勢が悪くなっていることがあるので、定期的に伸ばしたりとか、同じ体勢で長時間いないとか(対策)してます」、また、大学生(10代)は「パソコン含めて6時間とかですね、スマホが4~5時間くらい。肩こりとかがちょっとあるかな」、会社員(40代)は「パソコンやスマホは10時間くらいは使ってる。適度に使ったら首回すとか、ストレッチするとか繰り返しているスマホは日常生活に欠かせないと思うので」とそれぞれの症状や対策を話してくれた。

イメージ(デスクワーク)

子どもこそ予防が大切

今やスマホは小中学生も使う時代。

出口正男整形外科部長は「子どもの骨というのは、ほとんどが軟骨でできている。成長するに伴い硬い大人の骨に変わってくるが、真っすぐな状態(ストレートネック)で成長していくと、首の骨の形そのものが前のめりの形になってしまう。そうならないためにも子どもに対してこそ、予防が大切です」と子どもは特に注意が必要だと指摘する。

子どもはストレートネックに要注意

誰でも簡単に見分ける方法が

ストレートネックかどうかチェックする簡単な方法がある。

長野赤十字病院理学療法士の小池聴さんは「耳の穴、肩、このラインを見ていただくのが良い」と話す。

椅子に座った状態を真横から見た時に耳の穴と肩が一直線であれば心配ないが、肩のラインより、耳が前に出ている場合はストレートネックの可能性が高くなるという。

真横から見た時に耳の穴と肩が一直線

小池さんは「ストレートネックになってしまう姿勢の一つが猫背。背中が丸まって、頭が前の方に出てしまう」と指摘する。

猫背

胸のストレッチ

ストレートネックが厄介なのは完治が難しいこと。

そこで予防や症状を和らげるのに役立つストレッチを教えてもらった。

壁に近付いて、同じラインに立ち、手を壁に掛ける。その際、手首が壁に入るように。

右足を一歩前に出して、出した足に向かって体重をかけていく。10秒から20秒くらい。

猫背の改善につながり、首が前に倒れるのを抑えられるという。

胸のストレッチ

肩まわりのストレッチ

手を上に上げる。楽に上がるところまで。

両方の肘をぐっと後ろの方に引き、肩甲骨を寄せるイメージ。

椅子に座り、両手を上げた状態から肘をゆっくり大きく後ろへ。(5~10回繰り返す)

肩甲骨の内側の筋肉、下の筋肉、これが働くことで胸を張りやすくなるという。

長時間、デスクワークなどが続く場合は、1時間おきに行うとよいそうだ。

出口整形外科部長は「気付かないうちに進行している、そういったところで厄介。視線を前に落とさないように、前を見て物を読みましょうといっても、なかなか難しい。合間合間にストレッチを入れたりとか、予防していくことが必要だ」と指摘する。

肩まわりのストレッチ

(長野放送)

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