群馬県(右)と栃木県(左)で見つかったヨウスコウカワイルカ科の化石=群馬県立自然史博物館提供

 群馬県立自然史博物館は16日、群馬、栃木両県で見つかった化石が約1100万~850万年前の海に生息していた新属新種のイルカと判明したと発表した。中国の長江(揚子江)にかつて生息し、絶滅した可能性が高いとされるヨウスコウカワイルカと同じ科で、群馬のイルカは正式に報告された同科の化石では世界最古。これまで最古だった米カリフォルニア州の化石(約1000万年前)より約100万年古く、同科の起源を解明する上で重要な発見という。

 当時は海だった両県付近に生息し、体長は2~2・2メートル程度。いずれも頭の骨で、群馬では耳の骨の化石2点も見つかった。額付近の盛り上がりや口の付け根のくびれなどの特徴からヨウスコウカワイルカ科と判断したが、のど付近の空気が通るくぼみが小さいなどの原始的な特徴もあり、両県の化石を新属新種の「エオリポテス ジャポニクス」と命名。3月に日本古生物学会発行の学術誌に論文を掲載した。

ヨウスコウカワイルカ科の復元した頭の骨を示す学芸員の木村敏之さん(右)と見つかった群馬の化石(中央)、栃木の化石(レプリカ、左)=前橋市で2024年5月16日午前11時半、田所柳子撮影

 安中市の碓氷川付近の1129万~1125万年前の地層から、1999年5月に同市在住の化石愛好家の中島一氏が発見し、同博物館に寄贈。宇都宮市の鬼怒川付近の1000万~850万年前の地層からは2012年3月、当時中学3年生だった同市の浜田幸典氏が見つけ、現在は栃木県立博物館に収蔵されている。

 同科のイルカで近年まで生息していたのはヨウスコウカワイルカだけという。自然史博物館学芸員の木村敏之さんは「北米からアジアに進出したのでなく、アジアが起源だった可能性も出てくる。化石を通じてイルカが泳いでいた当時の海を想像してほしい」と話す。

 18日からは群馬県の化石を同自然史博物館で6月30日まで、栃木県の化石を同県立博物館で11月4日まで特別展示する。【田所柳子】

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