【動画】空き家丸ごと1棟を使って学ぶDIY=細川卓撮影

 内房の穏やかな海を望む千葉県南房総市の富浦町原岡地区。5月中旬、木造2階建て、築50年以上の空き家に集まった20~60代の男女20人が、電動カッターやハンマーを使って汗を流した。

 空き家まるごと1棟を使ってリフォームを体験できる「空き家DIYコース」。現役の大工やDIYのスペシャリストを講師に、全5回で解体や下地処理、内装などを学ぶ。

 全国の空き家は過去最多の900万戸、ここ30年で2倍以上に増加。こうした数字を総務省が4月に発表し、自治体などの対策も各地で講じられる中、新たな取り組みの一つがこのDIY体験だ。

 南房総市で里山の交流施設運営やイベントを手掛ける「ヤマナハウス」が主催する。昨年の第1回が好評で、第2回も募集後すぐに定員が埋まったという。

 受講生のうち、8割がDIY初心者。IT企業の会社員や整体師など職業もさまざまだ。

 この日、床張りや外壁の下塗りを経験した春日美紀さんは「実物の家を使って経験できるのがすばらしい。自分でできること、プロに任せたほうがいいこともわかって実用的だった」と話した。東京で会社員として働いていたが、このコースを受講し、南房総市へ近々移住することを決めたという。

 空き家の活用が進まない理由の一つに、所有者にのしかかる解体や改修費用の大きな負担がある。ヤマナハウスの永森昌志代表は「自分自身で改修できる担い手が増えれば、お金をかけずに空き家を再生させることができ、活用の幅が広がる」と話す。

 永森代表によると、コロナ禍以降、都心に住む若者たちの間では地方移住や2拠点生活への関心は高まっている。受講生の中には、安く購入した空き家を自身でリフォームして費用を抑えて貸し出す「空き家投資」を見据える人もいるという。

 ヤマナハウスは、築300年の古民家や畑、裏山を再生しながら都心と地域を結ぶコミュニティーづくりを目指している。永森代表は「このコースでできたつながりを大切に、地域の人たちにいいねと言ってもらえるような空き家の活用法を模索していきたい」と話す。(細川卓)

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