途上国への技術移転を名目にした「技能実習」に代わる在留資格「育成就労」の創設を盛り込んだ入管難民法などの改正案をめぐり、自民、公明、立憲民主、日本維新の会の4党が共同提出した修正案が17日、衆院法務委員会で賛成多数で可決された。近く衆院本会議で可決され、参院に送られる見通し。

 改正されれば、外国人労働者が長期にわたって働きやすくなり、永住者の増加が見込まれる。これを踏まえ、政府は改正案に、故意に税や社会保険料を払わない外国人の永住資格を取り消すことができるようにする規定を盛り込んだ。これに対し、永住者や支援者に「外国籍住民の立場をあやうくする」との懸念が広がっている。

 立憲は政府案について「人権侵害が起きる要因が残っている」として対案を提出。与野党間では政府案の修正協議が行われ、永住資格の取り消しにあたり、生活状況などに十分配慮することなどを付則に盛り込むことで、自民、公明、立憲、維新の4党が合意した。

 技能実習制度では、同じ職場で計画的に技能を学ぶという考え方から原則3年間は職場の変更(転籍)が認めらず、ハラスメントなど人権侵害の温床との批判があった。育成就労は在留期間を3年とし、技能や日本語能力の要件を満たせば、就労から1~2年で本人の意向による転籍を可能とする。

 国内の労働力不足を背景に、より長く働ける在留資格「特定技能」へのステップアップを促すのも大きな狙いだ。技能実習制度は「特定技能1号」と対象分野にずれがあったが、育成就労制度では一致させる。

 衆院での審議では転籍の仕組みが論点となり、労働者が転籍を希望した場合に円滑に調整できるのかや、来日時の受け入れ企業が負担する初期費用を転籍先とどのように分担するのかについて質問があった。

 政府は、企業と送り出し国側の間で受け入れ窓口を担う「監理支援機関」とハローワークの情報共有を進めると説明。初期費用の分担の仕組みは今後決めるとしつつ、来日時の受け入れ企業の負担が大きくならないよう、転籍先に多めに負担してもらうことも検討するとした。(久保田一道)

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