北陸新幹線の金沢―敦賀間が新たに開業し、JR福井駅に到着した東京行きの一番列車「かがやき502号」を出むかえる大勢の人たち(3月16日)=共同

本連載の「北陸新幹線延伸『乗り鉄』見どころは 気になる敦賀の先」(2024年3月13日公開)で、3月16日に開業した北陸新幹線金沢―敦賀間の特徴や課題を取り上げた。筆者は4月下旬の平日に改めて今回延伸となった区間を訪れた。懸念した通り、福井駅と敦賀駅の使い勝手には少々戸惑っている。

列車の遅れで大混雑の恐れ

福井駅では東京方面からの下り列車が12番線、関西・中京方面からの特急列車と接続する敦賀駅からの上り列車が11番線と、同じホームの両側に停車するために乗降客でホームは始終ごった返していた。また駅構内が狭いせいで改札内には売店がないので、利用の際は注意してほしい。

敦賀駅では北陸新幹線と在来線の特急列車との乗り換えに当たって、結構な距離を歩くことになる。新幹線の列車と特急列車とが同じホームで乗り換えできればよいと筆者は記したものの、実現は難しいだろう。

敦賀駅の新幹線乗換口から、在来線やハピラインふくい線方面への通路を見たところ。通路の床には在来線の特急列車が発着するホームに向けて目立つような印が記されていたが、それでも途中で迷う人が多く見られた(2024年4月23日に筆者撮影)

筆者が利用した当日は特急列車の到着が遅れたため、北陸新幹線の列車は接続のために出発時刻を過ぎても敦賀駅で待っていた。もしホームで乗り換え可能なつくりとなっていると、列車に遅れが生じたときにホーム上では多数の利用者で大混雑となる恐れがある。少々不便でも、通路を介して乗り換えてもらうことで、混雑したときは駅構内に人出が分散するため何かと都合がよい。

武雄温泉駅のホームでは、西九州新幹線の「かもめ」と在来線の「リレーかもめ」「みどり」とが同じホームを発着するので乗り換えしやすい。しかし乗り換えは1時間におおむね1回、多くても2回と比較的少ないからこそこのような構造にできるとも言える(2023年10月26日に筆者撮影)

多くの新幹線列車が乗り入れ

所変わって、北陸新幹線の列車の多くが通る東京―大宮間の3駅でも、福井駅や敦賀駅で挙げたような問題が起きやすい。正式には東北新幹線の一部であるこの区間には、北陸新幹線をはじめ、上越、北海道、山形、秋田の各新幹線の列車が乗り入れていて、混雑が激しいからだ。

中央線や常磐線、総武線など、首都圏のJR東日本の通勤路線のように複線を2組敷いた「複々線」とすれば弱点は解消されるが、人口の多いこの区間に新たな新幹線の線路を敷設するのはたいへん困難だ。

東北新幹線では2024年に入ってさまざまなトラブルが発生し、そのたびに結構長い時間列車の運転見合わせが起きてしまった。その一部については本連載「新幹線の架線トラブル運休 悩ましい膨大な維持コスト」(2024年2月21日公開)で記している。このときの架線トラブルは東北新幹線の上野―大宮間で発生したため、乗り入れている北陸新幹線の列車も東京―長野間で運転を見合わせた。

筆者のもとに「トラブルは仕方がないとして、なぜ運転再開後もなかなか列車の遅れが収まらないのか」といった疑問がよく寄せられる。「なかなか」は人によって許容範囲が異なり、すぐに元に戻れば理想的だが、実際には3時間はみたほうがよい。その際の混雑にどう対応するかは大きな課題となっている。線路やホームなどが多いに越したことはないが、そううまくは運ばないからだ。

際立つ東京駅の混雑

とりわけ状況が深刻なのが、東北新幹線の同区間を走るほぼすべての列車が始発、終着となる東京駅である。わずか2面しかないホームのそれぞれ両側4本の線路に多数の列車が発着するため、普段から大変な混雑ぶりを呈し、何かトラブルが発生すれば混乱が生じやすい。

何しろ東京駅を平日に毎日発着する列車の本数は、1日当たりで東北・北海道・山形・秋田新幹線が1日166本、上越・北陸新幹線が152本の計318本と極めて多く、折り返しのために列車が停車する時間も短い。20番線8時07分着の「はやぶさ2号」が折り返して「はやぶさ7号」として出発するのは、なんとわずか11分後の8時18分だ。

東北・山形・秋田・北海道・上越・北陸の各新幹線の出発状況を示す案内表示。これだけの頻度にもかかわらず、ホーム2面に線路4線で発着がまかなわれている(東京駅にて2022年11月14日に筆者撮影)

平常時でも混雑気味な東京駅の問題を解決するにはホームを増やすしかない。新しいホームの両側に2本の線路を設置して合わせて3面のホームに線路6本とすれば、折り返し時間は30分近くに増やせる。トラブルが起きた際には東京駅に一時的に車両を留め置くことも可能だ。

過去にはホーム新設で対応

ホームの東側は東海道新幹線、西側はJR東日本の在来線とにはさまれていて、これ以上ホームを設置するスペースは存在しない。だが、それでも打開策はある。

実は1997年10月1日の北陸新幹線高崎―長野間の開業まで、東京駅には東京―大宮間を走る新幹線のホームは1面しかなく、在来線に移動してもらって今日の2面に増やしたのだ。在来線もホームが減っては困るので、このときは最も西側に位置するホームの斜め上に新しいホームを建設し、それぞれのホームに発着する路線を1面ずつ玉突きのように移動させ、空いたホームを新幹線向けに転用した。

さらなる増設に当たっては、現在の山手線外回りの電車と京浜東北線大船方面の電車とのホームの真上に新しいホームをつくり、在来線は再び1面ずつホームを移動すれば東北新幹線用の新ホームを生み出すスペースが生まれる。東北新幹線のホーム自体を重層化してもよいだろう。

福井駅も新たなホーム確保を

同様の発想をすれば、冒頭に挙げた福井駅の解決策も見通せる。北陸新幹線のホームは東側のえちぜん鉄道、西側のハピラインふくい、JR西日本越美北線の各ホームに挟まれていて拡張の余地がない。けれども混雑は今後もさらに続くだろうし、北陸新幹線にトラブルが起きたときは心配だ。

福井駅の新幹線ホームは、えちぜん鉄道(写真)や在来線などのホームに挟まれた狭い空間にある。おかげで新幹線の主要駅でありながらホームは1面しかない(2023年2月14日に筆者撮影)

筆者としてはハピラインふくい、JR西日本越美北線で2面使用しているホームを1面譲ってもらうか、北陸新幹線のホームを重層化して、現在のホームと合わせて2面確保すればよいと考える。いかがだろうか。

梅原淳(うめはら・じゅん)
1965年(昭和40年)生まれ。大学卒業後、三井銀行(現三井住友銀行)に入行、交友社月刊「鉄道ファン」編集部などを経て2000年に鉄道ジャーナリストとして活動を開始する。「JR貨物の魅力を探る本」(河出書房新社)、「新幹線を運行する技術」(SBクリエイティブ)、「JRは生き残れるのか」(洋泉社)など著書多数。雑誌やWeb媒体への寄稿、テレビ・ラジオ・新聞等で解説する。NHKラジオ第1「子ども科学電話相談」では鉄道部門の回答者も務める。

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