北海道別海町の「なかしゅんべつ未来牧場共和育成センター」で子牛8頭がヒグマに襲われて死傷したことを受け、21日夕に捕獲に向けた箱わなが牧場内に仕掛けられた。死んだ4頭のほかに重軽傷を負った4頭を安楽死させたことで犠牲になった子牛は計8頭になった。
子牛が襲われたのは、新生児用D型ハウス(幅10・8メートル、奥行き18・0メートル)。西側の出入り口は鉄の重い扉で常時、閉じられている。東側の出入り口は分厚いカーテンがかかっているものの、施錠されておらず、ヒグマはこちらから侵入したとみられる。
子牛は南北の壁際に配置されたハッチ(個室、片側15個)で飼育されていた。ヒグマに狙われたのは、侵入口から進行方向右側(北側)のハッチにいた生後3日~1カ月の雌の育成牛。死んだ4頭はいずれも生後1週間程度で、3頭はハッチから引きずり出され、牧草ロールが置かれたハウス中央付近に横たわっていた。もう1頭は「あと一歩でハッチから引きずり出されそうな体勢で死んでいた」(関係者)という。腹や内臓に爪跡やかまれた痕跡が残され、一部は食べられていた。
ハウスに敷かれたおがくずからはヒグマの足跡が複数、確認された。横幅は約17センチで、雄とみられる。同センターの友貞(ともさだ)義照専務(63)は「OSO18でさえ、中までは入ってこなかったという。それが、よりによって一番弱い新生児の牛舎を狙って中まで入ってきた」とショックを隠せない。「前日の午後4時半までは異常がなかった」と言い、子牛は20日夜から21日午前8時までの間に襲われたようだ。
町によると、2023年度に寄せられたヒグマに関する目撃情報(排せつ物や足跡などの痕跡も含む)は計97件。今年度は5月21日時点で11件と前年同期(13件)並みだ。だが、数年前から増加傾向にあるという。
牧場は道道243号沿いにある。町の中心部から約15キロ離れた郊外で、牧場が点在する。町は近隣の農家に注意喚起する一方、無料通信アプリ「LINE(ライン)」などで、住民にも注意を呼びかけている。【本間浩昭】
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