◆真意はともかく…発言撤回、双方謝罪
「こちら特報部」は石垣市議会の動画チャンネルなどで発言を確認した。YouTube「石垣市議会チャンネル」より、発言する中山義隆市長(スクリーンショット)
「市長が『お前の母ちゃん出べそ』と言った」。一般質問に立っていた内原英聡(ひでとし)市議が、自席にいた中山市長からこんな中傷を受けたと批判した。中山市長は「『お前の母ちゃん出べそ的な話ですよ』と言った。『お前の母ちゃん出べそ』とは言っていない」と反論。「言った」「言わない」と騒然となり、議長も「あまりにひどい」と困惑の表情を浮かべた。休憩に入り、約3時間にわたって質疑は止まった。 「出べそ」騒動の直前、内原氏は税務行政に関して「市長がかつて答弁してきた内容は誤りだと確認できた」と言及し、答弁を求めず次の質問に移った。中山市長は批判の言いっ放しだと、質問の仕方を問題視したかったようだ。 地元紙の報道などによると、再開に当たり、中山市長は「議会においても社会的にもふさわしくない言葉だと思うので発言を取り消したい」と陳謝。内原氏も受け入れる考えを示し、「長時間にわたって執行部、同僚議員、視聴者に対し、心配をかけた。私も反省している」と述べたという。◆「南西シフト」の舞台で何やってんの!?
石垣市では昨年3月、陸上自衛隊のミサイル部隊を置く駐屯地ができた。最近では、石垣港が有事に自衛隊や海上保安庁が使うことを想定する「特定利用港湾」に選ばれた。中国を念頭に防衛力を強化する「南西シフト」が進む先島諸島の一つだ。陸上自衛隊石垣駐屯地(公式Xより)
地元住民から反対や懸念の声も出る中、「出べそ」発言を巡って時間を浪費している暇はないのではないか。 「せやろがいおじさん」の芸名で沖縄を拠点に時事問題についてSNSで発信する榎森耕助氏は「先島諸島に対しては、他の沖縄県民からも注目が集まっている。その中で議論する人たちがどうでもよいことで議会を空転させ、不要なロスを生じさせている。非常に心細く感じる」と話す。◆ハラスメントなどで首長の辞職相次ぐ
「相手も市民が選んだ人だというリスペクトが互いに少しでもあれば、こんな状況にはならないはず。言葉選びにセンスもない。そもそも政治家って話し合いの専門家では?」 今年に入り、愛知県や岐阜県の自治体の首長によるハラスメント行為が判明し、相次いで辞職。首長の倫理観が時代遅れだと指摘された。「お前の母ちゃん出べそ」も古くからある悪口だが、今回は一般傍聴もできる議会での出来事。議場は議会活動の中心で、本来、神聖な場である。 「議場で発せられる議員、首長の言葉は本来、住民に向けられている。お互いに住民を代表しているという意識が希薄なのではないか」と、元神奈川県逗子市長で龍谷大名誉教授の富野暉一郎氏(地方自治)が双方をたしなめる。◆議会のヤジ、国会を手本にするべきではない
自身はヤジで議場がなごんだ経験もあるといい、「議場の質疑は真面目にやればよいわけではない。時にヤジやユーモアあるやりとりがあっていい。住民が議会に関心を持つ議論の仕方を勉強しなくてはいけない」と強調する。その上で、地方議会と国会の役割は違うと訴える。 「与党はよいしょ、野党は一方的な攻撃。そんな国会の様子を地方議会がまねているとしたら問題だ。国会をお手本にしてはいけない。地方議会では、相手の立場も意識し、地域の問題を解決する道筋を探る議論をしてほしい」 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。