自民党派閥の裏金事件を受けて自民が提案した改正政治資金規正法は19日、参院本会議で自民、公明両党などの賛成多数で可決、成立した。「抜け道」や検討事項が多く、実効性が不十分なままの改正となった。多くの野党は反対し、立憲民主党は20日に単独で内閣不信任決議案を提出することを決定。日本維新の会、共産党、国民民主党は決議案に賛成する方針だ。

 改正規正法の施行は2026年1月1日。政治資金パーティー券購入者の公開基準額を現行の20万円超から5万円超に引き下げることなどを柱とする。政治家の責任強化として、政治資金収支報告書が適正に作成されたことを示す「確認書」の作成を義務付け、確認が不十分だった場合には公民権停止の対象とする。政党から党幹部らに渡され、使途公開の義務がない政策活動費については、毎年大まかな使い道を公開し、領収書などは10年後に公開する。

 しかし、確認書の運用はあいまいで、政策活動費の領収書公開の範囲など制度の具体的な内容は「早期に検討」として先送りした。野党5会派が共同で求めた企業・団体献金の禁止や政策活動費の廃止など抜本改革にも踏み込まなかった。

 野党側はさらなる審議が必要だと訴えたが、与党は18日夜、参院政治改革特別委員会で採決を強行。立憲、共産、国民民主に加えて、衆院では改正案に賛成した維新も反対した。維新は、自民との党首会談で合意した調査研究広報滞在費(旧文通費)の使途公開のための関連法改正が見送られたことを受けて反対に転じた。

立憲・泉代表「国民に信を問おう」 岸田首相「課題に専念」

 改正規正法の成立後には、3年ぶりとなる党首討論が行われた。

 立憲の泉健太代表は「自民がルール違反をやっていたにもかかわらず、こんな法改正では国民はまったく納得しない」と批判。首相は「政治活動の自由と国民の知る権利のバランスの中でつくった制度だ。政治資金は民主主義を支える重要な要素だ」と主張した。

 泉氏は「この規正法改正がいいのか、悪いのか。国民に信を問おうじゃないか」と衆院解散・総選挙を迫ったが、首相は「さまざまな課題に取り組み、結果を出すことに専念しなければならない。それ以外のことは考えていない」と述べた。首相はすでに今国会中の解散を見送る方向で最終調整を進めている。

 維新の馬場伸幸代表と国民民主の玉木雄一郎代表は裏金事件などに対する首相の責任を追及し、退陣を求めたが、首相は進退には触れなかった。(大久保貴裕、笹川翔平)

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