<政治とカネ考・残された課題>  今回の政治資金規正法の改正論議で、野党が改革の「本丸」と位置付けた企業・団体献金の禁止。30年前の「平成の政治改革」でも積み残された課題だったが、自民党が見直しに強く反対し、法改正では手付かずのまま、再び温存された。

◆古くから問題視…度重なる改革でも「抜け道」残す

 企業・団体献金は、田中角栄元首相に象徴される金権政治やリクルート事件など、「政治とカネ」に焦点が当たるたびに問題視されてきた。政財界の癒着を生み、政策決定で利益誘導や汚職につながるとの批判は根強く、1975年の抜本改正で政党への献金を1億円までとする上限を初めて設けた。  さらに1994年の改正で政治家個人への献金を禁じ、代わりに税金を原資とする政党交付金制度を導入した。その際、政党や政治資金団体への献金を5年後に見直す付則を盛り込んだが、1999年改正は政治家の資金管理団体への献金を禁止しただけ。政治家が代表を務めることが多い支部を含め、政党を受け皿とする「抜け道」を残した。

◆自民に集まる献金は桁違いの年20億円超

 その結果、自民は他党より桁違いに多い献金を集め続け、近年は年間20億円を超える。野党は「企業・団体献金が政策をゆがめる」と禁止を求めるが、岸田文雄首相は国会審議で「多様な収入の確保が政策立案のバランスにつながる」「企業は寄付の自由を有する」と繰り返すばかりだ。

6月17日、衆院決算行政監視委で答弁を求め挙手する岸田首相=国会で

 自民の法案責任者が「自民党の力をそぎたいという政局的な話だ」と論点をすり替えたことからも分かるように、「力の源泉」を手放したくないのが本音だ。  経団連は一時期、企業献金のあっせんを取りやめていたこともあったが、近年は「民主主義の維持にはコストがかかる。企業が負担するのは社会貢献の一つだ」(十倉雅和会長)との立場だ。政財界ともに見直しの機運が高まらないまま、改革の機会を逸した。(近藤統義) 

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