次期衆院選に向けた連携を模索する立憲民主党と国民民主党の間で、なかなか分かり合えない政策テーマの一つが「原発」だ。国民民主の玉木雄一郎代表が18日の記者会見で、立憲民主の綱領が「原発ゼロ」を掲げていることについて「原発で働いている皆さんにどう説明するのか」と疑問視すると、立憲民主の泉健太代表は翌19日の記者会見で「政権を取ったらすぐ原発を全部停止しますとか、そんな話は全くしていない」と反論した。 玉木氏が「国民から信頼して任せていただける政策の中身で一致しないといけない」とけん制したのに対しては、泉氏は「ともに政権を担う決意があるなら、政策のすり合わせは一定、必要かなと考えている」と歩み寄りを見せた。(宮尾幹成)

◆「『自衛隊は違憲』でまとまっても国民に選ばれない」

国民民主には、大手電力会社の産業別労働組合(産別)「電力総連」や、原子炉製造部門を抱える電機メーカーの産別「電機連合」などの組織内議員が所属していることもあり、反原発色の強い議員も多い立憲民主とは原発政策に隔たりがある。

国民民主党の玉木雄一郎代表=7月18日、国会内で(佐藤哲紀撮影)

国民民主の玉木代表は、立憲民主との関係について、定数1の衆院の小選挙区制を念頭に「まとまることは今の選挙制度上、必要であることは否定しない」とした上で、政策については「政権を担うに足る政策でまとめるしかない。例えば『自衛隊は違憲です』という政策でまとまっても、国民に選ばれない」と話した。

◆「原子力産業で家族を養っている人はいらっしゃる」

玉木氏は、2020年に旧・国民民主の大部分と旧・立憲民主のメンバーで現・立憲民主を設立した際、現在の国民民主に所属する玉木氏らが合流新党に参加しなかったことについて、「原子力産業で雇用を得て、所得を得て、家族を養っている方はいらっしゃる。彼らの受け皿となる政党を残しておかなくてはいけなかった」と説明。「あえて誤解を恐れずに言うと、われわれがいなければ、彼らは自民党しか支持する政党がなかった」と訴えた。 「長期的に原発に頼らない社会ができることは理想だ」とも述べつつ、「過渡的な電源として、輸入する化石燃料(を使う火力発電)に頼って、円安の大きな原因の一つになっている。この現状をどう変えるかということは、責任ある政党としては示すべきだ」と指摘した。

◆「国民生活、企業活動に影響が出ないよう電力安定供給を」

立憲民主の泉代表は、玉木氏の記者会見での発言に対し、「『原発ゼロ』という文言を、そこだけ切り出して考えるのはミスリードだ」と苦言を呈した。

立憲民主党の綱領(エネルギー政策) 私たちは、地域ごとの特性を生かした再生可能エネルギーを基本とする分散型エネルギー社会を構築し、あらゆる政策資源を投入して、原子力エネルギーに依存しない原発ゼロ社会を一日も早く実現します。

泉氏は党綱領の「原発ゼロ」が出てくるくだりを読み上げた上で、「できる限り国民生活、企業活動に影響が出ないように、安定・安価な(電力の)供給というのが当たり前だ。立憲民主党はその路線で考えている」と語った。

立憲民主党の泉健太代表=7月19日、国会内で(佐藤哲紀撮影)

◆「表現は『原発ゼロ』でも『即ゼロ』ではない」

泉氏は、2020年の現・立憲民主の発足に当たり、旧・国民民主の政調会長として、旧・立憲民主の政調会長だった逢坂誠二氏とともに新・立憲民主の綱領の策定を担ったと説明。内容については、旧・国民民主の代表だった玉木氏に見せて「これでいい、これで行こう」と言われた経緯もあると明かした。 「表現は『原発ゼロ』とはいえ、即ゼロではない。思いとして1日も早く実現するということではあるが、かといって一足跳び、二足跳びにできるものではない。そういう現実路線の中で今の綱領ができている」と語り、国民民主との間で「着地点なり合意点を見いだすことは可能じゃないかと思っている」と強調した。


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