自民党総裁選の候補者9人による討論会(14日午後、都内)=共同

自民党は17日、那覇市で総裁選候補9人による演説会を開く。沖縄に近い台湾へ軍事的圧力を強めるなど日本周辺での軍事行動を活発化させる中国への抑止策をめぐり議論を交わす見通しだ。

中国の軍事力増強と海洋進出を受け、政府は自衛隊の南西シフトを進めている。2019年には鹿児島奄美大島に、16年以降沖縄県内では与那国島、宮古島、石垣島に新たに陸上自衛隊の駐屯地を置いた。

各候補には、安全保障分野への精通を示すことで、首相の重責を担うのに十分な資質があると示す思惑もありそうだ。

石破茂元幹事長は15日のフジテレビ番組で、中国が台湾を海上封鎖するケースに関し「少なくとも重要影響事態だ」と断言した。放置すれば日本への直接攻撃につながるリスクがあると、安全保障関連法に基づいて認定することになり得るとの危機感を示した。

石破氏が台湾有事を警戒するのは南西諸島の防衛と深く関わるからだ。最前線で任務にあたる自衛官の定員割れに警鐘を鳴らし、処遇改善へ関係閣僚会議を提唱する。岸田文雄政権が決めた5年間で防衛費43兆円のさらなる増額を訴えたこともある。

高市早苗経済安全保障相も台湾の海上封鎖を懸念する。「東京と熱海の間ぐらいに中国の戦艦や軍用機が展開するような事態になる。それぐらいの危機感を持って捉えている」と話した。

小泉進次郎元環境相は6日の記者会見で中国とロシア、北朝鮮を名指しして「権威主義体制に毅然と向き合うため日本の防衛力強化を加速する」と断言した。43兆円の防衛費目標について「速やかに実現しなければならない」と訴えた。

総裁選では国会議員の367票と同数になる党員票の確保が勝敗のカギを握る。党員には保守層が多く、中国への強硬姿勢や防衛力強化を競う展開になりやすい面もある。

22年8月には中国の弾道ミサイルが、台湾から110キロメートルに位置する与那国島近くに飛び、日本の排他的経済水域(EEZ)内に初めて落下した。24年8月下旬には、中国軍機が初めて日本の領空に侵入した。対話姿勢を打ち出しにくくなっている事情がある。

上川陽子外相は台湾有事への対応に関し「世界にいる邦人の生命を守ることは国家としての責務だ」と話し、邦人退避への備えを唱える。

河野太郎デジタル相は原子力潜水艦の配備を議論すべきだという持論を展開している。東シナ海から太平洋に抜けようとする潜水艦の監視を担うためという。中国の潜水艦が念頭にある。

小林鷹之前経済安保相は6日、石垣島で有事を想定したシェルターの建設予定地を視察した。日中友好議員連盟の会長を務めた林芳正官房長官は「中国のことを知ることは一つのポイントだ」として、自らの経歴が強みになると訴えた。

茂木敏充幹事長は「台湾有事は日本有事になる危険性がある」と言明している。9日には与那国島の自衛隊駐屯地を視察した。

加藤勝信元官房長官は「日本を取り巻く国際環境は厳しさを増している。先を見据えた戦略的な外交や安全保障の強化を進める」と説明している。

総裁選に出馬した9人のうち、防衛相経験者は林、河野、石破氏の3人。外相経験者は林、上川、河野、茂木氏の4人がいる。

沖縄県の玉城デニー知事は在日米軍基地の負担軽減を求めており、米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り国と対立する。内閣府は8月末、25年度予算の概算要求で沖縄振興予算として2820億円を求めたと発表した。県が求める3000億円を4年連続で下回った。

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