岸田文雄首相は21日、長崎原爆に遭ったのが国の援護区域外のため被爆者と認められていない「被爆体験者」の救済策を巡り、被爆者と同等の医療費助成を行うと表明した。全ての被爆体験者を対象とし、年内に開始する。長崎県の大石賢吾知事、長崎市の鈴木史朗市長と公邸で面会後、記者団に述べた。
面会に同席した武見敬三厚生労働相は、被爆体験者の一部しか被爆者と認めなかった長崎地裁判決に関し「最高裁で確定した先行訴訟などと比べても被爆者援護法の公平な執行は困難であるため、控訴せざるを得ない」と伝えた。大石、鈴木両氏は「重く受け止める」と応じた。控訴期限は24日。
首相は救済策に関し「精神科の受診を不要とするなど、利便性を高めた事業とする」と記者団に説明。年内のできるだけ早期の医療費から助成を適用する方針を示した。
地裁判決は、一部地域について放射性物質を含む「黒い雨」が降ったと判断。提訴した被爆体験者44人(うち4人死亡)のうち、死亡2人を含む15人を被爆者と認め、県と市に被爆者健康手帳の交付を命じた。残る29人の主張は「放射性降下物を認める的確な証拠は存在しない」として退けた。
首相は8月9日の「長崎原爆の日」に長崎市を訪問した際に被爆体験者と初めて会った。救済の要望を受け、具体的な対応策を調整するよう武見氏らに指示していた。〔共同〕
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