「フレア」を機体から発出するC130輸送機(航空自衛隊提供)=共同

自民党総裁選(27日投開票)は終盤に入り、中国とロシアによる日本周辺での軍事的挑発に対する抑止策が争点に浮上した。両国の軍用機の領空侵犯が続き、一部の候補からは、より強い対抗措置を取るための法整備を求める声も上がった。

ロシア軍の哨戒機は23日、北海道礼文島沖北方の上空で3時間の間に3度領空を侵犯した。航空自衛隊の戦闘機が3度目の侵犯の際、強い光と熱を放つ「フレア」を使用して警告した。その後、ロシア軍機は退去した。

対領空侵犯措置では①緊急発進(スクランブル)②無線による警告③フレアや信号弾を用いた警告――と段階を分けて対応している。木原稔防衛相は24日の記者会見で「フレアは選択肢の一つで適切な判断だ」と述べた。

警告射撃を検討したかを問われ「無線通告やフレア警告を適切に実施して領空外に退去したため、警告射撃を含めたこれ以上の措置はしなかった」と明らかにした。

8月26日には中国軍の情報収集機が初めて日本の領空を侵犯した。今回のロシアの行動も踏まえ、岸田文雄首相の後を継ぐ自民党総裁選の候補から発信が相次ぐ。

石破茂元幹事長は24日の討論会で対領空侵犯措置の根拠となる自衛隊法84条を改正する必要性に触れた。条文に対抗策として記述する「必要な措置」を具体的に示すよう求めた。

自衛隊法84条は外国機が領空侵犯した際に「着陸させ、またはわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる」と定める。

22日のフジテレビ番組では、領空侵犯を受けた場合、武器の使用により相手の抵抗を抑える「危害射撃」を可能とする法改正を議論すべきだと主張した。

防衛省によると、対領空侵犯措置の段階をどう進めていくかは、現場が状況に応じて判断する。危害射撃は、警察官職務執行法を準用する運用により、相手からの攻撃への正当防衛や緊急避難の場合に認められる。

石破氏は「(正当防衛などを除き)危害射撃ができないということを中国は百も万も知っているから抑止力が効かない」と指摘する。

高市早苗経済安全保障相も「日本はなめられている」と話し、領空侵犯により強い措置を取る法整備に前向きだ。24日の討論会で「厳正かつ必要な対応を求めていく。暴挙を許してはいけない」と述べた。空自のフレアでの対処は評価した。

今回のロシアの領空侵犯が特異な動きとして受け止められるのは、短時間に3度領空への侵入を繰り返しただけでなく、中国軍との連動性がみられるためだ。

8月下旬の中国軍機の領空侵犯後、9月18日には中国海軍の空母「遼寧」が日本領海に隣接する沖縄県沖の接続水域に一時入った。23日には中国、ロシアの艦艇8隻が共同でロシア機の領空侵犯が起きた付近の宗谷海峡を通過した。

小泉進次郎元環境相は討論会で「中国軍との連携など意図がないか真相究明すべきだ」と強調した。

中ロの一連の動きは日本の政権移行期を狙ったとの見方がある。林芳正官房長官はロシアの領空侵犯が首相の訪米中に発生したことも踏まえ「力の空白が生じているという誤解を生んではいけない」と説明した。

【関連記事】

  • ・フレアとは 光や熱放射、ミサイル攻撃避ける「おとり」
  • ・小泉悠氏、ロシアの領空侵犯「中ロ艦艇の航行と関係」
  • ・空自、退去応じぬロシア機に強い警告 初のフレア使用
  • ・ロシア軍哨戒機が領空侵犯 空自機、警告でフレア初使用

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。