自民党の石破茂総裁は10月27日投開票の日程で衆院選を実施すると明言し、「国民に判断材料を提供する」とした総裁選中の発言と食い違いが生じている。石破氏は、内閣発足から戦後最短の8日後の9日に衆院を解散する方針で、1日召集の臨時国会で本格的な論戦を行う時間はない。石破氏は政権の都合による恣意(しい)的な解散に否定的だった過去もあり、政治姿勢の整合性が問われる。

自民党総裁のいすに座る石破茂総裁(佐藤哲紀)

◆あいまいな言いぶりに転じ

 石破氏は総裁選で「国民に判断材料を提供するのは新首相の責任。本当のやりとりは予算委員会だ」と述べ、関係閣僚も出席して一問一答形式で行われる予算委を経てから衆院を解散する意向を示していた。  だが、9月27日に新総裁に就任すると、「なるべく早く国民の審判を受けないといけない」と曖昧な言いぶりに転じた。予算委よりも質問時間の短い党首討論を行う案も示し始め、30日の記者会見では「判断の材料を整える努力は続けていく」とトーンダウンした。  衆院解散は、憲法69条に基づき内閣不信任案が可決された場合などに踏み切るケースと、内閣の助言と承認に基づく天皇の国事行為を定めた7条を根拠に首相が事実上判断するケースがある。石破氏はこれまで、7条に基づき党利党略で解散時期を決めることに否定的な発信を続けてきた。

◆「実力者の意見を受け入れた」

  石破氏の変節について、自民内では「早期解散を求める実力者の意見を受け入れた」(ベテラン)との見方がもっぱらだ。予算委での野党の追及によって選挙前に内閣支持率が下がるリスクがあるためだ。  立憲民主党の野田佳彦代表は「今まで否定していたことを自分でやるとは思わなかった。筋を通してほしい」と批判。「国民の信頼を取り戻すため臨時国会で政治とカネを議論すべきだ」と話した。(井上峻輔) 

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