石破茂首相は4日、衆参両院の本会議で、就任後初の所信表明演説を行った。自民党派閥裏金事件を巡り「失われた政治への信頼を取り戻すとともに、納得と共感をいただきながら安全安心で豊かな日本を再構築する」と強調したが、建前論が目立った。立憲民主党の野田佳彦代表は「近代まれにみるスカスカの所信表明だ」と指摘した。(坂田奈央、中沢穣)

◆裏金問題は「それぞれの政治家が国民と誠実に向き合い…」

衆院本会議で所信表明演説をする石破首相=4日(池田まみ撮影)

 首相は演説で「ルール」や「日本」「国民」など5項目の「守る」を掲げた。裏金事件に関し「問題を指摘された議員一人一人と改めて向き合い、反省を求め、ルールを守る倫理観の確立に全力を挙げる」と説明。再発防止に向けては「それぞれの政治家が国民と誠実に向き合い、限りない透明性をもって公開することを確立せねばならない」と続けた。  先月の総裁選で「国民を信じて逃げることなく、正面から語る自民党をつくる」とも訴えていた首相だが、この日の演説で、裏金問題の実態解明に向けた再調査や、透明性確保の具体策に踏み込むことはなかった。  こだわりの強い外交・安全保障では「日米同盟の抑止力・対処力を一層強化」といった抽象的な表現にとどまった。持論の「アジア版NATO」や「日米地位協定改定」は封印した。

◆「選択的夫婦別姓制度の導入」言及せず

 これまで憲法9条の見直しも主張してきたが、演説では改憲に関し「在任中の発議実現」に向け「与野党の枠を超え、国民的議論を深めていただくことを期待する」と語るにとどめた。  総裁選で賛同の立場をアピールした選択的夫婦別姓制度の導入も、直接触れなかった。「若者や女性の幸せ、人権が守られる社会にしていかなければならない」とだけ述べた。  野党第1党の立憲民主党を率いる野田氏は「総裁選の時に熱っぽく語っていたことが全然入っていない」と指摘。「いろいろ守ると言っているけど、まずは約束を守れというところから入るしかない」と政治とカネの問題を追及する姿勢を示した。同党が同日発表した衆院選の公約概要では、「政治の信頼回復」の具体策として、企業・団体献金の禁止や国会議員の世襲制限などを挙げた。野田氏は会見で「選挙区では裏金議員と徹底的に戦っていかなければいけない」と述べた。 

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