◆本会議討論は委員会審査への冒瀆?
討論は地方議会などの審議手続きの一つで、採決前に議案や請願、陳情への賛否と理由を述べる。議案などを審議する委員会、本会議の両方で行われる。 8月29日。本会議の討論に制限をかけるべきだという提案が、品川区議会の議会運営委員会になされた。自民党会派から討論制限の提案がされた品川区議会の議会運営委員会=9月18日、東京都品川区で
提案した自民の小芝新区議は、委員会で討論された議案が、本会議の討論で再び取り上げられることについて「委員会審査への冒瀆(ぼうとく)や軽視につながる」などと主張。2分間を例に示し「一定の時間制限を設ける」「当該の議案などを審査した委員会の議員は討論できない」などの案を示した。 これに対し、他会派は猛反発している。弁護士で日本維新の会の松本常広区議は「委員会はあくまで予備的な審査であり、本会議で議論するなというのは意味が分からない」と指摘。無所属の柳沢聡区議は「発言機会が少ない少数会派や無所属議員への言論弾圧だ」と訴える。◆1年間で10分以上の討議は4件、これって多い?
区議会事務局によると、昨年6月~今年7月の計5回の定例会の本会議で、討論が10分以上に及んだのは4件。多かったのは5~10分の30件で、5分未満が4件だった。時間制限が必要なほど、討論が長引いている状況ではない。 この提案を反対派区議が交流サイト(SNS)で発信すると、一般市民から反対意見が続出。自民は「2分」とした時間制限の例を取り下げた。ただ、小芝区議は「細かいルールを示し、丁寧に説明したい」と話し、提案自体を取り下げる考えはないという。◆識者「むしろ本会議軽視ではないか」
今後も、議運委か全区議が出席する全員協議会などでの議論が続く見込み。制限を提案した自民会派は全議員40人のうち9人で、維新や共産党の会派など15人ほどが「制限の必要はない」と反対の姿勢を明確にしている。 東京23区では、6区で本会議の討論に時間制限を設けている。国会では衆参両院とも本会議での発言時間について会派間で申し合わせ、討論は1人10分以内(参院の重要案件は10~20分以内)を目安とする。円滑な議会運営が目的とみられる。 地方自治を専門とする横浜市立大国際教養学部の新垣二郎准教授は「討論は議員が自らの考えを有権者に発信する場でもある。時間制限は議会の意義を自ら低下させかねない」とし、品川区議会での動きについては「むしろ本会議軽視ではないか」と疑問を投げかけた。地方議会の委員会と本会議 議案は本会議に提出された後、分野ごとに設けられた委員会に付託される。委員会は自治体からの説明聴取などを経て、委員会として議案の可否を採決する。委員会の結果は本会議に報告され、賛成や反対の議員が討論を行った後に採決し、議案の可否が確定する。委員会は予備的審査で、本会議の決定に対する拘束力はない。
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