衆院本会議で地方自治法改正案の趣旨説明をする松本総務相(7日)

大規模な感染症や災害が起きた際に国が自治体へ対応を指示できるようにする地方自治法改正案が7日、衆院本会議で審議入りした。新型コロナウイルス禍で問題になった国と自治体の曖昧な関係を整理し、想定外の事態に備える。

現行制度では国による地方への指示権は必要最小限に抑えられており、感染症法や災害対策基本法といった個別法の規定がある場合に行使できる。

改正案は「国民の生命等の保護のために特に必要な場合」に行使できると記した。個別法が想定しない状況下でも必要な指示を出せるようにする。

法改正のきっかけの一つは2020年にコロナの集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」の受け入れを巡る対応だった。

感染症法上は自治体の仕事だったものの、およそ700人の感染者へ対処するには都道府県を越えた対応が必要だった。最終的に国が神奈川県などと連携して広域調整する役割を担った。

コロナ禍では緊急事態宣言の発令や行動制限を巡り、国と知事の意見が一致しない場面もあった。

新型インフルエンザ対策特別措置法が外出自粛や休業を要請する権限を知事に与えていた一方、政府が決定した基本的対処方針は国が総合調整や指示をできると記載していたためだ。あいまいな役割分担が政策決定に混乱をもたらした。

現在の地方自治法に基づく国による指示権の行使は自治体が違法な事務処理をした場合などに限られる。

行使事例として09年、福島県矢祭町が住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)に未接続状態にあることを巡り、当時の佐藤勉総務相が福島県知事へ接続を指示し、矢祭町長に是正を要求したことがある。

国の指示権の拡充には自治体への統制が強まるとの指摘がある。全国知事会会長の村井嘉浩宮城県知事は指示権行使について「特例と位置づけ、行使は必要最小限とする」よう国に要望した。

「国民の生命保護に必要」という行使要件への懸念もある。知事経験者からは「要件に具体性がない。乱発を防ぐためのセーフティーネットが必要だ」との声が出ている。

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