損保ジャパンではビッグモーター問題で社長と親会社会長が辞任したが…
◆株価下落や取引縮小など影響も
自民党は今回の問題で39人を処分した。だが、党総裁の首相は「国民に判断してもらう」として責任を取らなかった。企業法務に詳しい久保利英明弁護士は「直接的に自身の責任だったかは別として、その『長』として自ら辞めるのが、責任ある立場の人の役目だ」と批判する。 不祥事が起きた民間企業が、今回の自民党のように甘い対応をすると、株価の下落や取引縮小に拍車をかけかねない。ビッグモーター問題や自動車の車両認証不正などでは、実際の関与は別として社長が引責辞任に追い込まれている。◆役員報酬を強制返還させる「クローバック条項」
不正会計などが起きた場合、支払い済みの役員報酬を強制返還させる「クローバック条項」を導入する企業も増えている。一方、問題を起こした政治家について、久保利氏は「報酬を返還しなくていい。その場で謝ったふりをして、国民が忘れることを待っているようだ」と嘆く。 裏金事件では、国会議員の政治資金監査の緩さが浮き彫りになった。総務省のマニュアルでは、公認会計士などの監査人は、支出の数字が合っているかなど外形的な確認しか求められていない。しかも、パーティー券収入などのようにお金の入りは元からチェックの対象外。銀行口座や取引先も調査可能な企業監査とは厳格さに大差がある。◆経営陣の緊張感を高めるため
上場企業などが対象の金融商品取引法には、不正会計などでトップの責任逃れを防ごうとする仕組みがある。決算書類などの提出の際、内容に間違いがないということを経営者が保証した「確認書」提出の義務付けだ。不祥事防止の仕組み「内部統制」の構築とともに、「経営陣の緊張感を高めている」と大和総研の横山淳氏は指摘する。 一方、政治資金収支報告書には、政治家自身がその内容に責任を持つ制度はない。政倫審などでは、自民党安倍派と二階派の幹部らは「一切知らなかった」として、会計責任者に責任を押しつけるような発言に終始していた。 企業監査が専門の青山学院大の八田進二名誉教授は「政治が考える『監査』は上場企業のものと大きな隔たりがある。(首相が強調する)外部監査を単に拡大しても、チェックが甘いままだと、裏金事件のような不正を防ぐことは難しい」と話した。政治資金の監査 事務所費の架空計上問題などを受け、政治資金の透明性を高めるために2007年に導入を決めた。研修を受けた公認会計士や弁護士、税理士による「登録政治資金監査人」監査が義務付けられた。ただし、収入は監査の対象外。支出の方もそれが妥当かどうかを判断するのは議員側で、監査人に権限はない。「政治活動の自由」を重視した監査制度となっており、「ザル」との指摘がある。
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