自民党は15日、政治資金規正法の改正を巡る条文案を公明党に提示した。パーティー券購入者の公開基準額を「10万円超」と明記し、公明党と折り合わなかった。自民党は党内の調整を進め、法案を単独で提出する公算が大きくなった。
実務者協議の公明党トップを務める中野洋昌氏は記者団に「協議を進めたわけではなく改めて考えを伺っただけだ」と進展がなかったと説明した。「一致していない点があり、(法案の)共同提出はなかなか難しい」と述べた。
自民党幹部は記者団に対し、17日の総務会で規正法改正案の了承を得て、同日中に国会へ提出する意向を示した。改正内容を巡る公明党との協議は続くとも言及した。
15日に国会内で開いた協議で、自民党は条文案についてパーティー券購入者の公開基準額を現行の「20万円超」から「10万円超」に引き下げるとした。公明党は「5万円超」を譲っておらず、両者の隔たりが埋まらなかった。
政党が政治家個人に支払う政策活動費でも公開の範囲については結論を先送りした。公明党は議員への「明細書」の作成を義務付けるよう訴えており、自民党より厳しい公開基準を唱えている。
岸田文雄首相は6月23日に会期末を迎える今国会で規正法の改正案を成立させると明言している。実現には衆院を5月末までに通過させる必要があるとの見方があり、法案の提出が遅れるほど会期延長を迫られる可能性が出てくる。
野党は与野党協議の前提として条文案の提示を求めている。自民党は与党協議がまとまらない段階でも条文案の作成を迫られた。公明党は自民党に譲歩を求めているが、与党協議の停滞が続けば、自民党は単独での改正案提出を余儀なくされる。
公明党の山口那津男代表は15日の参院議員総会でパーティー券購入の公開基準などを念頭に「与野党でできるだけ幅広い合意形成を図るのは立法府の基本的なあり方だ」と語った。野党を含めた協議を重視する考えを重ねて示した。
「クリーンな政治」を掲げる公明党が安易に妥協する余地は乏しい。政治資金問題への対処が手ぬるいと見なされれば、支持層離れを招くリスクがある。2025年秋までにある衆院選に加え、25年の参院選や都議選で痛手になりかねない。
首相と山口氏は14日、首相官邸で会談した。首相は「自民党として法案化作業を進める。そのうえで公明党とも相談したい」と述べた。山口氏が会談後、記者団に説明した。
山口氏は公明党の対応について、自民党の作業を見守ると話したが、「野党の意見を聞き、幅広い合意形成をめざす努力も必要だ」とも発言していた。
自民党は参院で単独過半数を確保しておらず、規正法改正には他党の協力が欠かせない。野党第2党の日本維新の会との連携も探るものの、維新内では政治不信を招いた自民党との協力に慎重な意見が目立つ。
立憲民主党と国民民主党は規正法改正案の共同提出に向けた調整を進めている。規正法違反で起訴された議員が所属する政党への政党交付金を減額する方向だ。
両党は9日に共同提出をめざす協議を始めた。①政策活動費の廃止を含む政治資金の透明化②議員が責任を負う「連座制」の導入③政治資金を監督する第三者機関の設置――を柱に調整している。
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