自治体に対する国の指示権を拡大する地方自治法改正案を巡り、衆院総務委員会は21日、参考人質疑を行った。全国知事会長の村井嘉浩宮城県知事は、指示権の行使は自治体の意見を反映させた上で最小限度にとどめるよう求め、「拡大解釈されてはならない」とくぎを刺した。立憲民主党などの推薦で出席した参考人は「立法事実はなく、乱暴な議論だ」と法案を批判した。(三輪喜人、我那覇圭)

国会議事堂(資料写真)

◆識者ら「問題解決しないどころか逆効果」「白紙委任に近い」

 中央大の礒崎初仁(はつひと)副学長は「緊急事態で国が指示したからといって、問題は容易に解決しないどころか逆効果だ。事件は現場で起こるので、東京で適切な措置を決めることは難しい」と、国の指示権を拡大することに疑問を呈した。  専修大の白藤博行名誉教授は、個別の法律でも想定できない事態が発生した際に国に指示権を認めることは「白紙委任に近い」と懸念を示した上で、改正案の曖昧な規定では「国の指示権発動の範囲も無制限に広がる恐れがある」と問題視した。  指示権拡大を首相に答申した地方制度調査会(地制調)の委員を務める山本隆司・東大大学院教授は、緊急時に想定外の事態が発生することについて、「個別法が制定、改正されるまでの応急的な対応として制度を考えた」と地制調の議論を紹介。関西大の永田尚三教授は「危機管理、事前の備えの視点から非常に望ましい」と賛意を示した。  村井、山本両氏は与党、礒崎氏は立民、永田氏は日本維新の会、白藤氏は共産党が推薦した。  ◇  

◆廃案を訴える集会「緊急アクション」23日に開催

  地方自治法改正案の廃案を訴える集会「緊急アクション」が23日、東京・永田町の参院議員会館講堂で開かれる。  地域主権主義に根差した政治や行政を目指す「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク(LIN-Net)」など4団体が主催。7日にも国会内で同様の集会を開いたが、その後の衆院総務委員会の審議では、地方自治体に対する国の指示について「政府答弁が抽象的な説明に終始している」として再び開催する。  23日の集会は、東京都世田谷区の保坂展人区長、杉並区の岸本聡子区長らが登壇。午後6時15分から、参加無料。先着190人。ユーチューブでも配信する。申し込みは「ローカル・イニシアティブ・ネットワーク」のサイトから。 

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