米グーグルがネットサービス大手の旧ヤフー(現LINEヤフー)との間で同社の検索連動型広告事業を制限する内容の契約を結んでいたことが、独占禁止法違反(私的独占など)に当たる疑いがあるとして、公正取引委員会が調査を進めていたことがわかった。

 調査を受けグーグルは今月、自主的に改善し再発防止策を講じる計画を公取委に提出した模様だ。公取委が計画に実効性があると認定すれば、グーグルに履行義務が生じ、公取委によるグーグルへの初の行政処分となる。

 関係者が取材に明かした。国内の検索連動型広告の市場規模は1兆円超。グーグルがシェアの7~8割を占め、ヤフーは追う立場にある。

 一方、ヤフーは2010年から検索や広告配信の技術提供をグーグルから受け始めた。自社サイトだけでなく、自社サイト以外の検索ポータルサイトなどで、利用者が検索した内容に関連がある広告を配信する事業をしているが、これらはグーグルの技術を使って行っている。

「問題なし」の前提が崩れたか

 提携当時、業界には「グーグルの支配が強まり公正な競争が阻害される」との懸念があった。当時の公取委は、ヤフーの事業は妨げないとの契約内容だったため「直ちに問題はない」と判断していた。この当時「問題なし」とした前提だった条件が、ほごにされていた格好だ。

 圧倒的シェアのグーグルが技術力を背景に市場の公正な競争をゆがめた疑いがあるとして、公取委は調査していたという。

グーグルが利用の「確約手続き」とは

 今回公取委とグーグルの間で用いられている確約手続きとは、独禁法違反の疑いで公取委から調査を受けている事業者が、違反の疑いがある行為の取りやめや再発防止などの自主改善策を盛り込んだ「確約計画」を公取委に提出できる制度。公取委が実効性があると判断して計画を認めれば、計画の履行を条件に調査が終わる。通常発出する排除措置命令や課徴金納付命令は出さず、違反認定もしないが、「行為のとりやめ」や「再発防止」など、通常の排除措置命令で命じられる項目を盛り込ませることで、命令と同等の効力を持たせている。

 公取委は監視も続け、計画が実行されていないと判断すれば認定を取り消し、調査を再開する。計画の認定は行政処分の一つ。不当な競争のゆがみの疑いが生じた際、公正な競争環境を素早く取り戻す狙いで18年末に始まった。談合・カルテル事件は対象外。(増山祐史、田中恭太)

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