環境企業が集積する「エコタウン」をインドで整備できないか――。そんな構想の実現可能性を探る事業に今年度、北九州市や市内の企業などが乗り出した。インドの環境・インフラ開発大手「ラムキーグループ」と連携し、北九州型の環境事業をインドに「輸出」できないか調査検討していく。【山下智恵】
市は2023年9月、ラムキーグループと環境国際ビジネスを推進するための連携協定を締結。環境・リサイクル産業が集積する「北九州エコタウン」をモデルに、インドでのエコタウン整備や環境人材の育成などで連携を図ることを確認した。
今回、北九州市内に拠点を置く五つの企業やラムキーグループなどが協力。同グループの本社があるハイデラバード市(人口約700万人)と、ビシャーカパトナム市(人口約240万人)を対象に調査することにした。企業・団体側は廃棄物の再資源化のための技術などを、市はエコタウン整備や環境政策に対する知見を提供し、インドでの事業展開の可能性を探る。
一連の調査は環境省の委託事業で、年間2000万円(最大3年)の助成を受ける。
ラムキーグループの環境部門を担う「リ・サステナビリティ」のマスード・アラム・マリック社長によると、インドも日本と同様に石油や鉱物など原料の多くを輸入に頼っており、国内でのリサイクル体制の整備が急務だという。
同社はインド全体の産業廃棄物処理の6割を担っている。5月下旬に北九州市役所を訪れたマスード社長は「北九州モデルを使いながら環境問題に取り組んでいきたい」と話した。
武内和久市長は定例記者会見で「経済成長が著しい場所での取り組みは意義深い。北九州市が格闘し培ってきた歴史やノウハウが、世界人類の未来に貢献できることは誇らしい」と述べた。
廃棄物の処理、原料化に着手
北九州市とラムキーグループが2023年9月に連携協定を締結後、市内に拠点を置く企業がインドなど海外での環境事業の展開に着手している。
廃棄物処理業の西原商事ホールディングス(八幡西区)は、ラムキーグループが所有するインドや中東のごみ処理施設に対し、医療用廃棄物処理のための焼却炉の提供を目指す。1カ所あたりの投資額は7億~10億円程度を見込む。
廃棄物リサイクルを手がけるアミタホールディングス(京都市)は、北九州エコタウン内にある循環資源製造所で取り組んでいる、廃棄物をセメント原料にする技術の輸出を目指している。現在ラムキーグループが手がける年間50万トンの代替原燃料の供給を、アミタの技術活用により4~5倍にする目標を掲げる。
アミタHDの末次貴英社長は「環境問題は海外でも深刻。日本で培った循環の技術を海外で生かしていきたい。その経験を北九州にもフィードバックできれば」と話す。
北九州エコタウン
廃棄物ゼロの循環型社会を目指す国のエコタウン事業として1997年7月に全国で初めて認可され、若松区の響灘埋め立て地に整備された。リサイクル団地や実証研究エリアなどがあり、基礎研究から実証実験、事業化までを行う施設が集まる。これまでに26事業を展開し、67件の実証研究を実施してきた。投資額は総額888億円(2023年3月末時点)で国内最大規模。年間約10万人の視察者が訪れる。
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