雪景色やスキーを楽しめる北東北は、冬に、春に、国内外から観光客を呼び込んできた。ただ、気候変動で、その魅力に「異変」が起きている。

樹氷鑑賞会が中止に

 八甲田(青森)、蔵王(山形)と並んで3大樹氷観賞地の一つに数えられる森吉山(北秋田市)。樹氷が見られる森吉山阿仁スキー場によると、今季は2月中旬以降、雨や暖冬少雪の影響で、樹氷が崩れてしまった。

 樹氷は雪氷が付着して怪獣のように見えることから「アイスモンスター」とも呼ばれる。「例年は一度崩れても再び塊になるが、今季は難しかった」と担当者。2月下旬に予定していた夜の樹氷観賞会は中止せざるをえなかった。

 一方で、今季の樹氷観光は、近年では最多の7千人近くが訪れた。秋田と台湾を結ぶチャーター便が就航し、市などの台湾向け誘客PRの効果もあってか、インバウンド(訪日客)が好調だったためだ。

 市観光課は「2月後半は本物の樹氷を見てもらえず残念」としつつ、樹氷観賞の代わりにソリなどの雪遊びを提案し、「雪になじみの薄い台湾からの観光客に好評だった。今後も樹氷が見られなかった時の代替プランを充実させたい」としている。

 岩手と秋田を結び、両側に雪の壁がそびえる「雪の回廊」が目玉の観光道路「八幡平アスピーテライン」は、開通日が早まっている。

 岩手土木センターによると、2008年以前はGW直前だったが、17年からは4月15日になった。柏台観測地点の積雪量は、19~23年度の平均が約448センチで、記録が残る10~18年度の平均より26センチ低くなっている。

短くなる春スキーシーズン

 標高約1300メートルの八甲田ロープウェー山頂公園駅付近を起点にコースが広がる八甲田スキー場(青森市)。長い期間、スキーやスノーボードを楽しめるのが魅力だが、営業終了は早くなる傾向にある。

 かつては5月10日以降も営業するシーズンがたびたびあったが、この10季では1度だけだ。

 今年はGWに入った直後の4月29日にコースを閉鎖した。雪が少なくなったためで、スキー客を運ぶ八甲田ロープウェーは「シーズンを通して雪の降る量が少なくなっている」という。

 残雪を求めて愛好家らがやってくる山にも変化が垣間見える。岩手県と秋田県にまたがる八幡平(1613メートル)の山頂付近の斜面は5月中旬、スキーヤーらでにぎわっていた。スノーボードをしていた盛岡市の男性(72)は「滑れる期間は短くなっている。昨年はここで6月下旬まで楽しめたけど、今年はどうなるか……」。

 クロスカントリー元日本代表選手で、八幡平市観光協会の海藤美香さん(59)は「雪の量が年々少なくなる一方で、コロナ禍明けで雪目当てのインバウンド客は戻ってきている。年間を通じて楽しんでいただけるよう工夫したい」と話す。(滝沢隆史、伊藤恵里奈、江湖良二)

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