東京大学などの研究グループは20日までに、脂肪肝の画像から発がんリスクを予測する人工知能(AI)モデルを構築したと発表した。採取した肝臓組織の画像から、AIが発がんリスクを数値化。症状が進行した「肝線維化」が起きる前でも、肝がんの発症予測などが可能になったとしている。
中性脂肪が肝臓にたまる脂肪肝は、肝不全や肝がんにつながる場合もある。肝線維化が発症リスクの判断指標となるが、脂肪肝では線維化が進んでいない状態でも、肝がんに至るケースが報告されている。
研究チームは、全国9カ所の医療機関で肝臓の一部を採取して顕微鏡で調べる「肝生検」を受けた2432人の患者について、スキャナーで取り込んだデジタル画像を収集。生検後7年以内に肝がんを発症した46人と未発症の639人を抽出し、一部患者の画像をAIの深層学習に用いた上で、診断の予測精度を検証した。
その結果、AIによる発がんと非発がん例の正解率は82.3%。医師が生検で判断した場合は78.2%で、同等の精度だった。
また、AIは強い炎症で細胞異型が生じたり、脂肪肝が進行したことで脂肪の沈着が少なくなったりした症例などを、将来の発がんリスクとして判断。軽度の肝線維化から実際に発がんした症例のうち半数を、高リスクと予測していた。
研究チームの建石良介・東大大学院医学系研究科准教授は「胃や腸の粘膜生検の病理画像から、将来の発がんリスクを予測するAIモデルを作成することも可能だ。脂肪肝診療のさらなる発展だけでなく、他疾患への応用も期待できる」と話している。論文は5月20日、米国の肝臓病専門誌「ヘパトロジー」オンライン版に発表された。
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