東京電力は20日、福島第一原発で相次ぐトラブルを受けて実施した作業の安全点検の結果を原子力規制委員会に報告した。経験に基づく思い込みでリスク要因に向き合えていなかったことや現場の作業員の小さな違和感が手順書や対策に結びついていかなかったことなどが、トラブルの共通要因だったという。
同原発では昨秋からトラブルが続いている。昨年10月に作業員が高濃度の汚染廃液を浴びる事故が発生。今年2月には本来閉じるべき弁が開いていたため、配管洗浄中に汚染水が建屋から漏れた。さらに、4月には作業員が敷地内で掘削作業中に誤って高圧電源ケーブルを損傷させ、停電が発生。処理水の放出が一時中断した。
こうした事態を受けて、東電は6月7日までの約1カ月間、995件の作業を点検し、現場状況を確認。リスク要因を抽出したところ、675件で改善が必要と判断したという。改善が必要となった要因として、経験に基づく思い込みによるリスク評価の甘さや、安全に対する現場の声の対策反映の不十分さがあったという。
共通する弱みも浮かんだ。経験から「これで大丈夫だろう」と思い込みからくるトラブル想定の甘さ▽リスクが残っていることを前提にした防護措置の検討の不十分さ▽現場の声やノウハウの重要性への意識不足▽現場の防護措置の確認不足といった「四つの弱み」が浮き彫りになったという。
原子力規制委員会の田中知委員は「リスクは全て洗い出されていない可能性を考えながら、作業する中でおかしいなと思ったら、立ち止まって考えたり、専門家の意見を聞いたりしていくことが大事だ」と話した。
規制庁は「(作業点検をするきっかけとなった)4件のトラブルへの考察と作業点検の結果をより深掘りして、背景要因と対応策についてさらなる検討を求めたい」としている。(玉木祥子)
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