日本初の水素とバイオ燃料を活用したハイブリッド観光船「HANARIA」=MOTENA-Sea提供

 日本財団は4日、日本初の水素燃料電池を搭載した洋上風車作業船「HANARIA(ハナリア)」で、二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション運航の実証実験に成功したと発表した。洋上風力発電施設への作業員の輸送などで活用する。【山下智恵、城島勇人】

 国全体のCO2排出量の5%を占める(2019年度)内航運輸の脱炭素化を目指し、財団が22年に始動した「ゼロエミッション船プロジェクト」の取り組み。

 航空機をイメージしたデザインのハナリアは、20トン以上の船舶では日本初となる水素とバイオディーゼル燃料のハイブリッド船。全長33メートル、全幅10メートル、重さ248トンで定員約100人。商船三井グループなどが出資する「MOTENA―Sea(モテナシー)」(東京)などが開発した。

 実証実験は3月26日~4月4日。北九州市若松区沖約15キロにある浮体式洋上風力発電システムの実証機「ひびき」まで往復約30キロで、水素燃料電池での航行に成功したという。今後、作業員の輸送や関係者の見学などで活用する。

 北九州市で開いた記者発表会で、日本財団の海野光行常務理事は「水素船はカーボンニュートラル社会の切り札になる。(実証実験で)水素が船舶燃料として使えることが確認できた。今後は大型船舶を動かせる水素燃料エンジンの開発に取り組みたい」と述べた。プロジェクトは26年度をめどに大型タンカー(全長105メートル)やレストラン船(65メートル)の開発、水素ステーションの設置にも取り組む予定。

 ハナリアは、10日から北九州市を拠点に観光船としても運航する。観光船の際は水素とバイオ燃料のハイブリッドで航行し、CO2削減率は53~100%という。

 観光は、主に門司港(北九州市門司区)と小倉港(同小倉北区)を発着する4コース。関門橋の下を通り唐戸市場や巌流島を船上から楽しむクルーズや、小倉港―若戸大橋間を往復して工場夜景を巡るナイトクルーズなどがあり、5500~1万1000円。専用サイトから乗船予約ができる。

 運航は関門汽船(門司区)が担い、水素関連産業の集積を目指す福岡県が水素代の一部を補助して支援する。

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