「17年ゼミ」の集団の一つ「ブルード10」。2021年に発生したもので今回とは別の集団=米インディアナ州で、ロイター
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 米国の中西部から南東部で初夏にかけ、1兆匹を超すセミが大量発生すると専門家が予測している。13年と17年ごとに地上に出てくる「周期ゼミ」の二つの集団が羽化するタイミングが221年ぶりに重なるためだ。米メディアは、英語でセミを意味する「シケイダ」と終末戦争を指す「アルマゲドン」を組み合わせた「シケイダゲドン」という造語を使い、迫り来る神秘の自然現象に注目している。

 セミは枯れ木などに産みつけられた卵がふ化して幼虫になり、地中に移動して何年かを過ごす。成長した幼虫はやがて地上に出て羽化し、成虫になる。日本に生息するセミが地中にいる期間は数年程度といわれる。一方、米国には13年と17年ごとに羽化するセミが複数の地域に生息し、周期が素数であることから「素数ゼミ」とも呼ばれる。

 これらのセミはともに姿形が似ており、黒っぽい体に赤い目が特徴だ。それぞれ羽化する年の違いで番号をつけて集団(ブルード)を区別している。今年発生が予測されている「13年ゼミ」はブルード19、「17年ゼミ」はブルード13と呼ばれ、この二つの集団が最後に同時発生したのは13と17の最小公倍数である221年前の1803年。当時の米国は第3代大統領トーマス・ジェファーソン、日本は江戸幕府で第十一代将軍の徳川家斉の時代だった。

 米メディアによると、同時発生は4月下旬から6月ごろにかけて中西部から南東部の広い範囲で起きる見通しだ。中西部イリノイ州の一部では、発生域が重なる可能性があるという。221年ぶりのセミの大量発生は鳴き声による騒音も懸念される一方、自然の不思議さを感じさせ好奇心をかき立てる自然科学イベントとして、北米で8日に観測できる皆既日食と並んで関心が高まっている。

 米コネティカット大のセミ研究者、ジョン・クーリーさんによると、仮に両種が交雑した場合でも、生まれる子は13年か17年の周期を持つことが予想されるという。「もし交雑種が生まれたとしても、どちらかの親の次の世代と同時に出現するため、交雑種ではない周期ゼミと区別がつかないでしょう。さらに次の世代がどうなるかは、今後の研究に期待してほしい」と語る。

 今回の現象を「シケイダゲドン」と名付けたクーリーさんは、メディアに引っ張りだこだ。「私にとって周期ゼミの発生はいつだって楽しいものです。多くのセミが生息する日本では、毎年多くの人を引きつけるでしょう。米国でもそれは同じです。姿を現すまでに少し長い時間、待たなければいけないことを除けば」【ニューヨーク八田浩輔】

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