国際宇宙ステーションから撮影された月=2017年8月3日、NASA提供・ロイター

 米航空宇宙局(NASA)が月の「標準時間」導入の検討に乗り出す。民間企業も巻き込んだ国家間の月探査競争が過熱するなか、高い精度が求められる月での作業や相互運用のインフラとなる時間管理の標準化を先導する狙いがある。

 米ホワイトハウスの科学技術政策局(OSTP)が2日、月での標準時間を導入するための戦略づくりを2026年末までにまとめるようNASAに指示した。OSTPのウェルビー国家安全保障副局長は声明で「宇宙で活動するオペレーターの間で時間の定義を統一することは、状況認識、航行と誘導、通信の成功に不可欠だ」とした。

 月では地球より重力が弱いため、時間の進み方は地球よりも速い。従来は月探査計画ごとに地球の時間に合わせて運用されてきた。月でのミッションの増加が見込まれるなか、同期していない探査機や衛星が連携する際などにわずかでも時間のずれが生じれば、運用上の大きな問題となりかねない。こうした背景から欧州宇宙機関(ESA)も月の標準時間について検討してきた。

 国際標準とするには、宇宙探査などに関する基本原則を定めたアルテミス合意に加わる日本を含む36カ国・地域間での協議も必要になる。宇宙開発で米国としのぎを削る中国とロシアはアルテミス合意に加わっていない。【ニューヨーク八田浩輔】

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