ヤギに公園などの除草をしてもらう取り組みが岐阜県内で広がっている。スタートしたのは13年前だが、近年は高齢化などの社会問題も背景に活躍の場を広げているという。

 今月11日、美濃加茂市中部台の公園「さくら広場」。ヤギ28頭がトラックから降りると、斜面を駆け上がり、場所を頻繁に変えながら伸びた草をむしゃむしゃと食べていく。

 「ヤギさん除草隊」と名付けられた作業を請け負っているのは、農業生産法人「FRUSIC(フルージック)」(美濃加茂市)だ。2011年に代表の渡辺祥二さん(54)がヤギ2頭からスタートさせ、現在は約50頭のヤギが活動する。

 美濃加茂市のほか、各務原市、可児市からも公園などの除草依頼を受けている。美濃加茂市土木課によると、除草にかかる費用を人に頼むのに比べ3分の2程度に抑えることができるという。

 企業からの除草依頼も多く、昨シーズンは10社ほどから依頼があった。工場を建てる際に、法律で一定の緑地を確保することが必要とされているが、緑地はのり面になっているところが多い。傾斜地の除草は人の手だと大変だが、ヤギは苦にならない。

温暖化で雑草生える期間が…

 「近年は、社会問題を背景に売り上げが伸びてきている」と渡辺さん。一つは「人手不足」。市によると、除草作業はこれまで地域住民が担うこともあったが、高齢化が進み、危険が伴う斜面での作業の担い手が不足している。建設業者に頼むこともあるが、人手不足で依頼が難しくなっているという。

 また、温暖化により、ヤギの稼働期間も長くなっているという。渡辺さんは「雑草が生える期間が長くなっている。以前は10月までだったのが、今は11月までになった」と説明する。ヤギ除草の売り上げは、20年比で、1・7倍に増えた。

 今後、目指すのは除草だけでない、プラスアルファの取り組みだ。

 昨年からは岐阜大学と連携して、市内の中部国際医療センターの敷地での除草も始まったが、同医療センターによると、手術前の入院患者が病室から除草するヤギの姿を見て励まされたこともあったという。同医療センターの担当者は「除草だけでなく、癒やしの効果も狙っている」。

 渡辺さんは「アニマルセラピーも注目されている。教育委員会と連携して、子どもたちの教育に役立てるなど、活動の場をさらに広げていきたい」と話している。(寺西哲生)

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