つながりたいと思っていても、旧友に連絡を取ることはためらうものだ。最新の研究では、どのような介入を行えば、私たちが古い友情をよみがえらせる気になるかを明らかにした。写真は、インドのジョードプルで撮影した、異なる世代のそれぞれの友情。(PHOTOGRAPH BY NEVEN GRUJIC, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

音信不通になっていた旧友から連絡が来るのはうれしい驚きであり、友情が復活すれば満たされた気持ちになる。心理学者は長年、友人との交流の多さや友人の多様さがもつ利点を指摘してきた。しかし、カナダのサイモンフレーザー大学と英サセックス大学の心理学者たちが、2024年4月23日付けで学術誌「Communications Psychology」に発表した最新の研究によれば、私たちは多くの場合、旧友と再びつながることをためらうようだ。

この研究では全部で約2500人を対象に7つの調査を実施した。最初の調査では、参加した人の90%以上が、「連絡が途絶えてしまったが、また話してみたい友人を思い浮かべることができる」と回答した。しかし、参加者がその友人と再びつながりたいと望み、相手も喜ぶだろうと考え、さらに、メッセージを書く時間を与えられた場合でさえ、実際にメッセージを送った人は約3割にとどまった。

このためらいを理解するため、研究チームは別の調査で、音信不通の友人に連絡する、見知らぬ人に話しかける、アイスキャンディーを食べる、ごみを拾うなど、さまざまなタスクに対するやる気の大きさを評価してもらった。すると、旧友に連絡することへの意欲は、見知らぬ人に話しかけることや、ごみ拾いと同じ程度だった。

研究チームは次に、旧友からのメッセージは好意的に受け止められる傾向にあるという過去の研究結果を紹介し、旧友と再びつながるよう促そうとした。しかし、この介入によって参加者のためらいが和らぐことはほとんどなく、メッセージを送った人は依然として少なかった。

「人々の考えを変えようとするのは最善の戦略ではないかもしれないという結論に達しました」と研究を率いたサイモンフレーザー大学の心理学者ララ・アクニン氏は話す。「そのため、人々の考えを変えるのではなく、行動を変えることに本気で取り組みました」

友情の練習

行動を変えるという新しいアプローチでは、参加者に「ウォーミングアップ」をさせた。あるグループには3分間で現在の友人や知人にメッセージを書いてもらい、別のグループにはソーシャルメディア(SNS)を見るのに3分間を使わせた。その後、全員に旧友へメッセージを書いて送るよう促した。

練習は効果を発揮した。事前にSNSを見たグループでは、旧友に連絡した人は31%にとどまったが、現在の友人でウォーミングアップした人の53%が最終的にメッセージを送信した。これはウォーミングアップしなかった人より7割も多い。

では、なぜウォーミングアップして乗り越えなければならないほど障壁が高いのだろう? 時とともに、旧友でも他人のように感じられるものだとアクニン氏は説明する。この心理的な距離こそが、人々が旧友とつながる際に主な障害になっているという。

米マサチューセッツ大学アマースト校の心理学者ジュゼッペ・ラビアンカ氏によれば、連絡が途絶える前に互いが築いていた友情の種類も、心理的な距離を埋める難しさを左右するという。互いを信頼する親密な関係だったなら、途絶えた友情を再開できる可能性が高く、拒絶されるのではないかという不安も小さい。なお、ラビアンカ氏は今回の研究には参加していない。

拒絶されたり気まずくなったりすることを恐れるあまり、私たちは慎重になりすぎているのかもしれないとアクニン氏は述べている。

結局のところ、私たちにとって、社会的なつながりはより多く、より多様な方がいい。だからこそ、新型コロナウイルスの流行が始まったころ、自宅に閉じこもっていた多くの人が旧友と連絡を取っていたのだ。ラビアンカ氏は旧友との関係を「休眠状態のつながり」と呼んでいる。

「多くの場合、つながりが休眠状態になるのは、引っ越したり、興味の対象が変わったりして、相手を見失ってしまうためです。しかし、よく考えてみれば、それが久しぶりに再会することの有益さや面白さにつながっているのです」とラビアンカ氏は話す。「別々の人生を歩んでいるため、新しいことやクールなこと、変わったことの話が聞けるかもしれません」

SNSでつながりを維持する

SNSは休眠状態だったつながりを復活しやすくする一方で、つながりを希薄にする側面もある。今回の研究では、旧友に抱く親しみは連絡のしやすさにつながるという結果が出ており、SNSは親しみの維持に役立つ可能性がある。「SNSで目にする人々は私たちの頭、あるいは少なくともフィードをよぎり続けます」とアクニン氏は話す。

しかし、ラビアンカ氏によれば、SNSは表面的に旧友とのつながりを保つ助けになるかもしれないが、旧友とのつながりを完全に復活させるには、実際に会話することが必要だという。つまり、電話や対面でリアルタイムに反応し合うということだ。

旧友と連絡を取りたいがためらっているなら、それはあなただけではないとアクニン氏は述べている。むしろ、あなたは多数派だ。アクニン氏によれば、今回の研究で行ったようなウォーミングアップが役に立つという。アクニン氏は、現在の友人にメッセージを送ることに慣れてから、しばらく連絡を取っていない人に宛先を変更し、送信ボタンを押すよう提案している。

おそらくあなたが思っている以上に、メッセージを受け取った相手は喜ぶだろう。米ピッツバーグ大学の心理学者ペギー・リウ氏らの研究によれば、私たちが考えているより、人々は誰かから連絡が来ることを喜んでいるようだ。

「驚きは私たちの感情を増幅させる傾向があります。つまり、連絡を受けた人は、その驚きによってうれしい気持ちが大きくなるのです」。なお、リウ氏も今回の研究には参加していない。

「相手は再びつながることを望まないのではないかと、人々は恐れています」とラビアンカ氏は話す。「ほとんどの場合、これは私たち自身の考えにすぎません。実際に連絡を取ってみれば、相手が再会を喜んでいるとわかり、驚くでしょう。そして、それは試してみる価値があります」

文=Olivia Ferrari/訳=米井香織(ナショナル ジオグラフィック日本版サイトで2024年6月8日公開)

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