発がん性の疑いが指摘される有機フッ素化合物(総称PFAS〈ピーファス〉)について、沖縄県が全41市町村で土壌調査した結果を公表した。汚染源とみられている米軍基地がない自治体の土壌からも高い値のPFASが検出され、幅広い要因で汚染が広がっている可能性が浮かび上がった。

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 県はこれまで河川や浄水場の水質調査を重点的に行ってきたが、全県で土壌調査をするのは初めて。国が昨年7月に都道府県や政令指定市に示した方法に基づき、土壌を採取し、水に溶けたPFASの量を分析する溶出量試験で測定した。

 調査地点は、県と市町村が「一般的な土地」か「汚染の懸念がある土地」かを区別した上で選んだ各1地点で、具体的な場所を伏せて結果が公表された。

久米島町で最高値

 PFASの代表的な物質であるPFOSとPFOAは、すべての市町村で検出された。最も高い値のPFOSが検出されたのは離島の久米島町で、1リットルあたり92ナノグラム。2番目は南風原(はえばる)町の49ナノグラムだった。PFOAは名護市の95ナノグラムが最も高く、次いで豊見城(とみぐすく)市の79ナノグラムだった。

 いずれの調査地点も米軍基地から離れており、自治体が「一般的な土地」として挙げた場所だった。

 久米島町は結果を受けて、県の土壌調査地点が役場の庁舎敷地内であったと公表した。あわせて周辺の河川や水道水の調査を行ったが、異常な数値は出ておらず水源には問題ないとしている。現在、町独自で追加の土壌調査をしており、高濃度のPFASが検出された原因を検証するという。

 一方、米軍嘉手納基地を抱える嘉手納町ではPFOSとPFOAが計20.8ナノグラム(一般的な土地)、北谷町は19.5ナノグラム(汚染の懸念がある土地)と、基地がある自治体で高い値が検出されないケースも目立った。

 担当の県幹部は「全市町村で検出されたことや、米軍基地がある自治体でそんなに大きな値が出なかったことは意外だった」と驚く。土壌について国が汚染の基準を設けておらず、今回の土壌調査の結果について「安全性の評価はできない」としている。

 ただし、県は米軍基地もPFASの汚染源の一つとの見方は変えていない。嘉手納基地など米軍基地周辺からは高濃度のPFASが度々検出されており、横田基地(東京都)や横須賀基地(神奈川県)、米国内の基地周辺でも確認されている。

土壌の基準値なく「国は指針を」

 国は2020年、飲み水についてPFOSとPFOAの合計を1リットルあたり50ナノグラムとする「暫定目標値」を設定した。体重50キロの人が、1日2リットルを70年ほど飲み続けても健康に悪影響がない値だとしている。一方、土壌の基準値は設けていない。

 PFASに詳しい京都大学の原田浩二准教授(環境衛生学)は「自然界に存在しないPFASは、消火剤や撥水(はっすい)加工したフライパンなどに使われてきた。こうした汚染源から土壌にも流入したとみられ、地下水へ溶け出す可能性も考えられる。全国で調査を行い、国は指針を示す必要がある」と話している。

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 <おことわり>当初配信の記事に、久米島町の対応を加筆しました。町は、町内の水源には問題ないとしています。

PFOSの値が高かった上位5地点

①久米島町 92 一般的な土地

②南風原町 49 一般的な土地

③宜野湾市 47 汚染の懸念がある土地

④名護市  44 一般的な土地

⑤豊見城市 25 一般的な土地

PFOAの値が高かった上位5地点

①名護市  95 一般的な土地

②豊見城市 79 一般的な土地

③久米島町 61 一般的な土地

④多良間村 52 一般的な土地

⑤座間味村 50 一般的な土地

(1リットルあたりの量。単位はナノグラム)

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