宇宙航空研究開発機構(JAXA)は23日に開かれた文部科学省の専門家会議で、基幹ロケットの開発で機体を段階的に改良する手法を2025年度から取り入れる方針を示した。世界の打ち上げ需要や技術動向をみながらロケットの性能を柔軟に見直せる体制を整える。
専門家会議「宇宙開発利用部会」で明らかにした。検討するのは「ブロックアップグレード方式」と呼ばれる手法で、全体の仕様を最初に決めず、段階的な改良を重ねる。
ロケットに載せる人工衛星の重さや打ち上げ方の傾向は、時代ごとに変わる。ロケット自体の技術革新も急速に進む。同方式ではこうした変化を踏まえて、次の仕様を設計できる。現在、世界の打ち上げ数の約半数を占める米スペースXもこの手法をもとにロケットを開発する。
従来の基幹ロケット「H2A」は01年から運用してきたが、大きな改良は15年の1回にとどまっていた。24年に打ち上げに成功した新型「H3」は数年ごとに改良していく。小型基幹ロケット「イプシロンS」も同様の方針で開発する。
H3の改良の方向性としては、まず複数の小型衛星を一体運用する「衛星コンステレーション」などへの対応に取り組む。次の段階では部品などを簡素化し、打ち上げコストを抑えた機体を目指す。3段階目で機体の再使用技術の飛行実証などを検討する。
同日の宇宙開発利用部会では、文科省が6月上旬に素案を出した、月面探査の考え方に関する文書も正式に策定した。文書では国際競争力のある月面輸送サービスを提供するため、世界初の高精度着陸に成功した無人探査機「SLIM(スリム)」の技術を、国内企業に移転することが重要だとする認識などを示した。
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