北海道大学の太田裕道教授らの研究チームは大阪大学と共同で、電気を流して熱の伝わりやすさを変化させる素子を開発した。実用性が高い固体の材料を使い、熱伝導率を大きく変えられる。現在は捨てている比較的温度が低い廃熱が伝わる先を自在に切り替えれば、水の加熱などで有効利用できる。

白金で覆った黒いガラス板の上に熱トランジスタを設置した=太田教授提供

電気を流して熱伝導率を変化させる素子を熱トランジスタと呼ぶ。この素子を使って熱の流れをうまく誘導すれば、蓄熱技術などと組み合わせてセ氏100〜300度程度の廃熱の有効活用に生かせる。だが従来の熱トランジスタは液体の材料を使っていた。蒸発したり毒性を持つ液体が漏れ出したりする懸念があり、実用化には向かなかった。

北海道大学は2023年に世界で初めて液体を使わない全固体熱トランジスタを開発した。さらに今回は材料にニッケルとランタンの酸化物を使い、スイッチをオンオフした時の熱伝導率の差を1.5倍に広げた。

スイッチのオンオフの切り替えを7回繰り返しても性能が変わらず、耐久性の維持にめどが付いた。ただ今回の素子はセ氏250度以上の高温でなければ熱伝導率を切り替えられない。今後は低温でも動作するように改良する。

熱トランジスタのスイッチを切り替えて熱伝導率を変えれば、熱が伝わる方向を操作できる。熱が伝わる先を切り替えれば、水を温めてお湯を作ったり料理の保温に使ったりして熱を効率的に使える。

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