ゼブラフィッシュの骨格写真=国立遺伝学研究所・前野哲輝さん撮影、川村哲規・埼玉大准教授提供
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 魚の「首の骨」は、どこ――? 埼玉大や国立遺伝学研究所などのチームは、首の骨に当たる頸椎(けいつい)を、魚類は一つしか持たないと考えられるとの研究成果を発表した。背骨を持つ脊椎(せきつい)動物は、陸上に進出した後に頸椎の数を増やし、複雑な「首」を獲得していったことを示唆する結果だという。

 哺乳類はヒトや、キリンなど首の長い動物も含め、ほとんどの種類で首の骨は7個。爬虫(はちゅう)類は8個程度、鳥類は11~25個とされる。ところが魚類は、哺乳類と形態が大きく異なっているために比較ができず、頸椎に該当する骨は分かっていなかった。

 脊椎動物の背骨は「椎骨」と呼ばれる骨がつながって構成されている。頭側から「頸椎」「胸椎」などの順に連なっている。

 研究チームは、脊椎動物が持っている、椎骨の種類を決めている「Hox(ホックス)遺伝子」に着目。ゼブラフィッシュ(コイ科の小型淡水魚)やメダカの受精卵をゲノム編集で遺伝子改変してから成長させ、その子孫の骨格にどのような影響が出たかをCTスキャンして調べた。

 ゼブラフィッシュは頭側から5番目の椎骨に肋骨(ろっこつ)がつながっており、その見た目から1~4番目は「首」と見なすこともできた。しかし、胸椎(肩の位置)の先頭を作るHox遺伝子が働かないゼブラフィッシュを作ったところ、5番目ではなく3、4番目の椎骨の形状に異常が生じた。この結果から3、4番目も実は胸椎だったと分かった。

 またゼブラフィッシュと系統的には遠いメダカでは2番目の椎骨から異常が生じた。これらの結果から、魚類では1番目の椎骨だけが「頸椎」に当たる可能性が高まったという。

 研究チームの川村哲規・埼玉大准教授(発生生物学)は「脊椎動物が複雑な首の構造を獲得していく過程はまだ分かっておらず、その解明の一端としたい」と話す。研究の成果は英国の発生生物学専門誌に掲載された。【露木陽介】

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