国の天然記念物の「奈良の鹿」のうち、畑を荒らしたなどの理由で一部の鹿が奈良公園内にある特別柵に収容されてきた問題で、死ぬまで飼養してきた従来のあり方を見直し、一時収容とする方針が5日、奈良県の有識者会議で確認された。今後、具体的な内容について議論していくという。
方針が示されたのは県の検討委員会に付属する「鹿苑(ろくえん)のあり方等検討部会」。
畑を荒らすなどした鹿は、農家などからの通報を受けて「奈良の鹿愛護会」が捕獲し、同会が管理する「鹿苑」の特別柵で終生飼養してきた。
しかし、300頭規模の飼育が職員の負担となっている上、過密状態を改善する必要もあるとして、一時的な収容にとどめるべきだとの方針が示された。
この「一時収容」について、部会では「一定期間で放つという意味か、安楽死を意味するのか」との質問が出た。これに対し、リーダーの村上興正氏は「今後の議論である」として、具体的な収容の期間や、どの程度の頭数をもって「過密状態」とするかなどについて、次回以降に話し合うことが決まった。
このほか、愛護会が過去3年間に捕獲・収容した鹿の約7割が東大寺北側の奈良市川上町のエリアに集中していることが報告された。
検討委では今年度、鹿を生け捕りにしてきた「緩衝地区」についても駆除を解禁するか検討しており、同町も含まれる。
委員の渡辺伸一・奈良教育大教授は「実態把握なしに先の議論はできない」と指摘。同町で鹿の被害を防ぐ柵の設置が十分か、何らかの対応をほどこすことで特別柵に収容される鹿の減少につなげることも可能か、委員が今後、川上町の現地を視察・検証することが決まった。(机美鈴)
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