独マックス・プランク研究所や東京大学などの研究グループは、人間の活動で放出される窒素化合物が、地球の気候変動に影響を及ぼすことを明らかにした。地表や大気中で様々な反応を起こし、温暖化の要因になり得るという。英科学誌「ネイチャー」で発表した。

窒素は肥料や化学プラントで大量消費されるなど工業利用が盛んだ。工業利用の際には他の元素と反応して窒素化合物となり、環境中に放出されている。二酸化炭素(CO2)と同様、地球の気候変動に影響を及ぼす可能性があったが、全体像は分かっていなかった。

2019年時点での窒素化合物が気候変動に与える影響。濃い青色の地域ほど寒冷化が激しく、北半球で顕著なことが分かる=東京大学提供

研究グループは、地表や大気中での窒素化合物の作用を扱うモデルで、気候変動との関係を調べた。その結果、温暖化と寒冷化の両方に寄与することが分かった。一酸化二窒素などの一部の窒素化合物はそれ自体が温室効果をもたらす。高度約15キロメートルまでの対流圏を漂うオゾンとなって温暖化を招く場合もある。

一方、他の窒素化合物は微細粒子のエアロゾルになって日光を反射し、気温を下げる。地表に沈着することで植物の成長を促進させ、二酸化炭素を減らす働きもある。

例えば、産業革命後の1850年から2019年までの期間では窒素化合物はエアロゾルとして気温を下げる効果が強く、寒冷化を導いた。ただ、二酸化炭素などの温暖化ガスの影響に打ち消され、地球全体では温暖化している。

今後は、エアロゾルの減少などで窒素化合物による寒冷化の効果が弱まるという。逆に肥料の増加などで、温室効果があるタイプの窒素化合物が増えていく可能性がある。研究グループは、「CO2やメタンと同様、窒素化合物も排出削減に向けた取り組みを強化すべきだ」としている。

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