酵母を使ったSAFの研究に着手したのは、道内に工場を持つ製糖メーカー大手の日本甜菜(てんさい)製糖と、神戸大学大学院の荻野千秋教授らの研究グループです。

関係者によりますと、研究グループは、油をため込む性質を持つ「油脂酵母」と呼ばれる酵母を、ビートから砂糖を製造する過程でできる糖蜜という副産物で培養し、酵母が細胞内にため込んだ油を抽出します。

ただ、抽出するためには酵母の細胞壁を壊すことが必要で、研究グループでは今後どのように効率よく細胞壁を壊して油を抽出するか、方法を検討していくことにしています。

SAFをめぐっては、従来の航空燃料に比べて二酸化炭素の排出が抑えられるとして、生産に適した原料の研究が国内外で進められていて、会社と大学によりますと、酵母からSAFを生産する研究は国内で初めてとみられるということです。

国内ではいわゆる「低糖質ブーム」や人口減少などで砂糖の需要が減少する中、製糖メーカーでは砂糖に代わる新たな需要の掘り起こしも見いだしたいねらいもあります。

日本甜菜製糖総合研究所の金澤由希子研究員は「砂糖だけでなくSAFなどの地球に優しい油を作り、世の中に出していきたい」と話していました。

揚げかすを活用 「SAF」の原料を作る取り組み加速

一方、都内に本社を置くベンチャー企業では、天ぷらやフライなどを調理する時に出る「揚げかす」を活用して航空機の代替燃料「SAF」の原料を作る取り組みを加速させています。

ベンチャー企業の「エコリオ」は、外食企業やスーパーなどから回収した揚げかすをもとにSAFの原料を年間およそ200トン製造しています。

揚げかすの回収先にはこの企業が開発した専用の機械が設置されていて、揚げかすはまずは回収先で機械を使って圧縮し、搾りかすと油に分離されます。

分離した油は調理に再利用される一方、ベンチャー企業では搾りかすを埼玉県熊谷市にある自社の工場に集め、加熱や圧縮の処理を行ってSAFの原料にしています。

会社によりますと、揚げかすは自然発火の危険性があり、産業廃棄物として処理されていますが、回収先に専用の機械を設置することで、搾りかすを集めることが可能になったということです。

会社では今後、SAFの原料を生産する国内の工場をおよそ100か所に増やすとともに、生産量を年間20万トンに引き上げることを目指すとしています。

エコリオの浦野由紀夫社長は「揚げかすに含まれる油はきれいな油なので、精製するコストもかからず、SAFの原料として非常に有効に使える。揚げかすを製造している業者はあまたいるので、今後、たくさんの企業と手を組んで事業を拡大させたい」と話していました。

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