記者会見で説明する日本産科婦人科学会の加藤聖子理事長(東京都中央区)

日本産科婦人科学会(日産婦)は28日、重篤な遺伝性の病気が子どもに伝わるのを防ぐため、体外受精した受精卵の遺伝子を調べる「着床前遺伝学的検査」の審査結果を発表した。検査対象を改めた新たな見解に沿って運用を始めた2022年4月以降で、審査結果を公表するのは初めてとなる。以前は認められていなかった「網膜芽細胞種」など58例を承認していた。

日産婦は以前、成人に達する前に日常生活が難しくなったり、死亡したりする病気を対象に着床前遺伝学的検査を認めていた。だが、22年に新たな見解を発表し、成人後に発症する病気や、治療法がない病気もしくは高度で侵襲度が高い治療を行う必要がある病気なども対象に入れた。

報告書では22年4月以降に申請があり、23年内に審査をした72例の病名を公表した。承認は58例で、取り下げは2例、不承認は3例だった。審査継続中は9例あった。日産婦によると旧見解だった16~21年の審査件数は年平均約24件だった。新見解により対象とする病気が拡大した影響で、審査件数は3倍程度に増え、過去最大だという。

同じ病気でも審査結果が異なる場合もあった。日産婦は「病名では判断せず個別の背景に留意している」とし、家系内での発症者の重症度や治療可能性の有無のほか、検査を希望する夫婦の生活背景などを基に審査しているためとしている。

不承認となった3例については「申請された家系の状況から判断し重篤性の定義を満たしていない」「個別の社会的な背景や考え方などについて適応を判断するうえで必要な情報がさらに必要」などを理由にあげた。

一方で、着床前遺伝学的検査は命の選別として反対する意見もある。日産婦は今後も継続的に審査結果を公表する方針で、加藤聖子理事長は「国民のご意見を伺いながら、しっかりと議論を進めていきたい」と話す。

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