詳しく知りたい〈8〉

 使用済み核燃料の中間貯蔵施設建設が、なぜ山口県上関町で検討されることになったのでしょうか。 原発工事が止まり、新たな地域振興策として中国電力が町に提案しました。一問一答形式で詳しく説明します。

【連載】核燃料のゆくえ

原発で使い終わった核燃料をどうするのか。中国電力と関西電力による中間貯蔵施設計画の動きや、使用済み核燃料の現状を連載で報告します。

 Q 山口県上関町で使用済み核燃料の中間貯蔵施設の建設が検討されている。どのような経緯があるの?

 A 表面化したのは2023年8月。中国電力が関西電力と共同で建設する計画を町側に提案し、「立地可能性調査」の実施を申し入れた。

 Q 町には原発の計画もあるのでは?

 A 原発は福島第一原発の事故後に工事が止まっている。西哲夫町長から新たな振興策の要請を受けた中電が、調査段階から億単位の交付金が見込まれる中間貯蔵施設を提示した形だ。青森県むつ市に続く全国で2例目の計画だ。

 Q 中間貯蔵施設の計画は突然の話だったの?

 A 多くの町民にとってはそうだったようだ。一方で、町議会の議事録によると、22年12月以降、非公開の全員協議会で中間貯蔵施設を建設した場合の財政的なメリットについて議論していた。

 Q 今回の計画の概要は?

 A 中電によると、上関原発の建設予定地に近い自社の所有地に建設する。規模や建設のスケジュールなど具体的な計画は調査後に策定するとして、明らかにしていない。

 Q 町側の対応は?

 A 調査の申し入れから半月後、臨時議会で議員10人のうち7人が賛成したことを受け、西町長は調査の受け入れを表明した。3人の議員は反対した。役場に入ろうとする西町長を反対する住民が囲み、騒然となる場面もあった。

 Q 反対の理由は?

 A 事故や災害時の放射能漏れなどの危険性や、核燃料サイクルが確立されていない中で貯蔵の期間が延長され続けることへの懸念を訴えている。住民への説明がないまま調査を受け入れた決め方にも「拙速」との批判が出た。関西電力という「管外」の使用済み核燃料まで持ち込まれることへの反発も強い。

 Q 周辺市町の反応は?

 A 複数の首長から「本心ではやめてほしい」「メリットはない」と否定的な発言があった。移住・定住促進などのまちづくりに対する影響が懸念されている。

 Q 上関町の他に中電が貯蔵施設の建設を検討した場所はないの?

 A 中電は、島根原発の構内での建設も検討したという。上関は広い用地があり、島根原発構内より「効率的な施設の検討が可能」と説明している。原発建設に向けた調査で、上関が「強固な岩盤」と確認されている点も理由に挙げた。

 Q 中電はなぜ関電と共同で進めるの?

 A 貯蔵施設を必要とする一方、管内の原発が島根原発のみの中電としては単独での建設・運営のコストは「過大になる」と判断し、ニーズの強い関電に共同開発を提案したという。

 稼働中の原発がない中電に対して、7基が稼働可能な関電は4、5年すると、使用済み核燃料を貯蔵する原発内のプールが満杯になる見通しだ。電力自由化で競争の激化が見込まれる中、経営規模が大きい関電に中電が貸しをつくろうとしているとの見方もある。(山野拓郎)

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