知床世界自然遺産の知床岬で計画されている携帯電話基地局について、希少種オジロワシを含む動植物への再調査のめどがたっていないことが4日、北海道斜里町で開かれた同遺産地域科学委員会(中村太士委員長)で明らかになった。いまだ事業者から再調査に関する報告がなく、このままなら「早くて2026年春」とされた工事再開はさらに遅れそうだ。

 希少猛禽(もうきん)類のオジロワシの影響評価は2繁殖期(1.5年)の調査が必要とされている。科学委は前回6月の緊急会議で環境省から事業計画の説明を受けた後、7月から来年秋までの調査項目やスケジュールを作成。8月16日に同省を通じて事業者に助言した。

 調査項目は多岐にわたり、知床岬のオジロワシは警戒心が強い可能性があるため、オジロワシの調査に習熟している人の人選も条件につけた。さらに基地局の規模の根拠、パネルの火災や破損した際の対応についての回答も求めた。

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 科学委のスケジュールだと、オジロワシを含む動植物の調査は来年秋に終了し、世界自然遺産の「顕著な普遍的価値(OUV)」へ影響を及ぼさないかを評価したうえで、事業の規模や工法の見直しを含め、事業の可否を判断することになっていた。

 だが、事業者から報告がきておらず、環境省は「まったくめどが立っていない」という。

 年内に残された調査は木々の葉が落ちた後の営巣木の確認や今年の巣の利用状況などに限られる。本格的な調査が来年春からとなると、影響評価は再来年の秋以降になり、「工事を再開するにしても、着工は3年後の27年春になるのでは」とみる委員もいる。(奈良山雅俊)

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