2023年のカナダでは大規模な山火事が発生した=ロイター

米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所の研究チームは、2023年にカナダで発生した大規模な山火事で出た炭素の量が、化石燃料由来の排出で世界3位のインドの1年分と同程度だと突き止めた。気候変動で山火事が起きやすくなり、炭素を吸収する森林が失われて地球温暖化が加速する悪循環が起きる可能性があるという。

23年のカナダは観測データが残る1980年以降で最も暖かく乾燥した気候で、大規模な山火事が起きた。カナダの森林面積は地球全体の約8.5%を占め、ロシア、ブラジルに次ぐ世界3位だ。23年には通常の年の平均の約7倍で、北海道の面積の1.8倍にあたる約1500万ヘクタールが焼失した。

ジェット推進研のブレンダン・バーン研究員らは欧州宇宙機関が運用して地球の大気観測に用いる人工衛星「センチネル5P」を使って、23年5〜9月に山火事で出た煙が含む一酸化炭素(CO)を観測した。COの排出量から二酸化炭素(CO2)の排出量を推定し、排出した炭素の量を見積もった。

その結果、山火事で約6億4700万トンの炭素が出たことが分かった。22年に化石燃料を燃やして出た国別の排出量と比べると、4位のロシアや5位の日本を上回った。中国、米国に次ぐ世界3位のインドとほぼ同等だった。

温暖化対策を現状のペースで進めても、50年代にはカナダの山火事の引き金になった極端な高温や乾燥した気候が常態化するという予測がある。ジェット推進研の論文は人間の活動で出たCO2などが温暖化を招いて山火事が起こり、森林が失われるために炭素の吸収力が低下して「温暖化に拍車がかかる懸念がある」とした。

ジェット推進研のバーン氏は「国ごとに許容されている炭素排出量を見直す必要性も出るかもしれない」と指摘する。研究成果は英科学誌ネイチャーに掲載した。

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