東京電力福島第一原発事故で帰宅困難となった地域を支援するために国の福島再生加速化交付金で福島県内の自治体に造成された基金について、会計検査院が調べたところ、5市町村での60事業の計約21億円が、使われる見込みがないにもかかわらず国に返還されていなかった。検査院は復興庁などを通じて返還を求めている。

 国は2014年以降、帰宅支援事業や移住環境整備のために交付金を支出。福島県や20市町村で478事業、計約4603億円の基金を造成した。基金は複数年の事業に使え、予算が残れば他の事業にも使える仕組み。国土交通省などの所管省庁が執行を管理していた。

 会計検査院が22年度末時点で、県や14市町村が保有する262事業の約806億円を調べたところ、60事業の計約21億円は使う見込みがなかった。所管官庁の管理が不十分だったこともあり、11事業の計約1.3億円は終了から5年が経過していた。

 基金から国への返還金は復興特別会計に計上される。検査院の担当者は「各省庁の担当者が事業をこまめに見ておけば、他の不足している復興事業に回せた可能性もある」と指摘する。復興庁は「予算の適切な執行が出来るように、各市町村に速やかな返還手続きを求める」としている。(座小田英史)

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